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コラボ勝訴 女性の連帯

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性搾取・デマ・妨害とたたかう

虐待や性搾取に遭った少女らに寄り添い活動をする一般社団法人Colabo(コラボ、仁藤夢乃代表)に対して、インターネット上のデマ投稿を発端に激しさを増した妨害行為。18日の東京地裁判決は、投稿が真実ではなかったと明示しました。一連の経緯の背景には女性差別や性搾取の構造があります。判決後に開かれた会見や報告集会での仁藤さんらの発言をもとに振り返ります。(取材班)

 判決は、40代男性(アカウント名「暇空茜〈ひまそらあかね〉」)による「コラボが少女をタコ部屋に住まわせて金を徴収している」とするネット投稿が「真実であると認められない」とし、男性に計220万円の支払いを命じました。コラボ側と弁護団は「投稿がデマだと認められた」と歓迎。一方、「賠償額が低い」と指摘しました。

 これについて太田啓子弁護士は「女性差別が(デマの)動機であることや、若い女性の困難を支援する団体への妨害という悪質さに(裁判官が)正面から指摘して怒っているという熱量が感じられない」と語りました。

 角田由紀子弁護士は「裁判官に、少女たちが受けた被害の本質の理解が足りない」と指摘します。その背景として「今までの法学教育は、ジェンダー平等とは何かを教えることがほとんどなかった」とも語ります。

少女の人生に影響

 買春者や性搾取産業の関係者が、虐待や家族からの性被害などで帰る場所のない少女を狙うケースが後を絶ちません。コラボは2018年度から都の若年女性支援事業を受託。衣食住や関係性のある「当たり前の日常」を取り戻すために、少女たちに伴走してきました。

 被告がデマを発信し始めたのは22年。それを信じてコラボ側に繰り返し問い合わせをする人や、メールで殺害やレイプの予告をする者が現れました。ネットにはコラボを中傷する書き込みがあふれ、コラボ側には注文していない商品が送り付けられるなど、さまざまな嫌がらせが始まりました。

 少女たちが滞在できるシェルターも、場所を特定され閉鎖・移転せざるを得なくなりました。「少女たちにとっていつでも戻って来られる場所だった。長い時間をかけ築いた地域との関係性も壊されてしまった」(仁藤さん)

 23年になると、少女に居場所や食料を提供するバスカフェに何人もの男性が来て怒鳴ったり、動画を撮ったりなどの妨害を繰り返すようになりました。

 被告によるデマの中でも拡散されたのが「コラボに公金不正がある」というものでした。都の調査で「委託料に過払いはない」と明記されたにもかかわらず、妨害は収まりませんでした。

 仁藤さんがアウトリーチに出た際は、複数の男性が仁藤さんを囲んでつきまとい、「税金返せ」と大声で繰り返すことも。その場にいた男性も次々に加わりました。

 デマの拡散には議員、弁護士、著名人なども加担しました。被告のフォロワーもどんどん増えていきました。

 都は妨害に屈し、バスカフェの中止をコラボに要求。1カ月ほど開催することができませんでした。最終的にコラボは都の事業への参加も断念し、現在は支援者らの寄付のみで運営しています。

「時間つぶす娯楽」

 「時間をかけず、いつでもできる娯楽だった」―。過去にネットでの攻撃に参加した50代の男性は、昨年12月に行われたインタビューでそう語りました。「タバコを吸っている時や、電車に乗っている時など『こんなに時間をつぶせるものがあったんだ』と。政治家が加わるなど燃料が投下されている状況。おかしいと気付いても、止まることができなかった」

 仁藤さんは「加害者はゲーム感覚で楽しんでいるが、生身の人間、生身の少女、命には無関心だ。妊娠した未成年女性が、デマが拡散されている時期だったためコラボに相談するか悩んでいる間に、中絶できる期間が過ぎてしまったケースもあった。一人一人の少女たちの人生に深刻な影響を与えた」といいます。

 被告がデマを流した動機とは―? 以前、セーラー服姿で胸などを強調し、「夜這(よば)いを期待する」などと設定された少女のキャラクターを仁藤さんが「性差別で性搾取」と指摘したことがあります。判決は、「被告が自らの好む漫画やアニメを批判する仁藤氏に対し強い敵意を抱」いており、「コラボを批判する動機がそこにあると自認している」としました。

 被告が「コラボと闘う」などとして募ったカンパは1億6千万円に上ると報告しています。動画の広告料で収益を得るほか、訴状など裁判の資料もネットで販売しました。同様の手口を使う人や、被告のデマに便乗する形で「Colabo疑惑追及」などを掲げて地方選で当選した市議、バスの現場に妨害に来た市議(当時)までいました。

 被告は訴額以上にSNSなどで「稼ぐ自信がある」といった投稿もしており、被告を批判する人などに対する訴訟を乱発しています。

 理事の齋藤百合子さんは「社会的に弱い人をたたくことで、憂さ晴らしをし、金もうけもできる。このような風潮に対して、(今回の賠償額では)全く歯止めにならない」と述べます。

 妨害への対抗も始まりました。バスの現場での妨害が激化していた23年2月ごろ、世代を超えた女性たちが個人でコラボに連帯し、バスの現場に結集しました。凍えるような寒い日も、汗が噴き出るような暑い日も「女の壁」をつくり、コラボの活動を守っています。

 理事の細金和子さんは「バスカフェにもおびただしい数の男たちが入れ代わり立ち代わり来た。性を買う男たち、性搾取の業者たちとつながる人たちなのだと私たちは肌で感じた」といいます。

 判決の日には「壁」に参加する女性も多く集まりました。仁藤さんは「女性たちが有志で壁となり、支えてくれた。私たちも何とか『ひとりじゃない』と思えたし、女性たちとのつながりで活動を続けられたことは少女たちも身に染みて感じている。ひどい目に遭ったが、連帯が強まったことには感謝している」と語りました。

(しんぶん赤旗2024年7月23日付より)

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