市民がつながり社会は動く 新宿区 東ちづるさんら平和トーク

 新宿区で開かれた「平和のための戦争展」で3日、俳優の東ちづるさんらが「まぜこぜ玉手箱」と名付けて、ピーストークを繰り広げました。コロナ禍により数年ごしで実現したという同企画。3人が登壇し、平和を実現するために、それぞれができることなどを語り合いました。

 登壇したのはほかに、ノーベル賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲さん、ドラァグクイーン(女性らしさを戯画化して表現するパフォーマー)のマダム・ボンジュール・ジャンジさん。最初に、三人が別々に登壇し、自身の活動について発言しました。
 川崎さんは、「ガザやウクライナの状況が日々報道され、国会では『アジアでも戦争が起きるかもしれない』と軍事の備えがいわれている。戦時中に近づいているのでは、と感じる状況がある」と切り出し、「しかし、私は楽観的で、戦争は止めることができるし、大量破壊兵器である核兵器は必ずなくすことができると考えている」と強調。国際社会で起きている変化の実例として、核兵器禁止条約について詳しく紹介しました。

核禁止条約に都市の支持が
 核兵器廃絶をめぐっては、従来、核兵器の保有国に行動を求める条約が中心だった中で、「核兵器の非人道性」に着目し、圧倒的多数である非保有国から、核の全面禁止を求める規範を作っていこうというのが、同条約だと紹介。「つまり、この条約は、世界的な運動の一環だ。この条約を使って、核兵器はあってはならないことを世界の常識にしていこうというものだ」と指摘しました。
 自身が共同代表を務めるピースボートが世界への船旅で、被爆の実相を国際的に広めていることに触れ、「核保有国はまだ、禁止条約に参加していないが、アメリカのニューヨークやワシントンDC、フランスのパリなど、都市単位で同条約への支持を表明する動きが出ている」と語りました。
 川崎さんは、核兵器禁止条約への日本の参加を求めるキャンペーンを立ち上げたことに触れ、「変化はつくれる。核兵器はなくせる。世界は動いていることを実感し、ともに手を携えていきたい」と発言を結びました。
 ジャンジさんは、ドラァグクイーンについて「ドラァグは引きずるという意味で、長いドレスを引きずるなど女性性をカリカチュア(戯画化)するという意味合いだが、私自身は様々な境界を飛び越えて、自分らしく生きることだととらえている」と語りました。
 ジャンジさんが取り組む、多様性を伝える絵本の読み聞かせを実演。会場の参加者と「OK」という掛け声を合わせながら、「いろんなお友達がいてOK」「どんな自分でもOK」と絵本「It’s Okay to Be Different」(トッド・パール作)の日本語訳を音読しました。

ドイツ平和村の絵本を朗読
 東さんは、「広島では8月になると、被爆や戦争の番組が多く放送される。東京では、ほとんど放送されず、『これでは忘却されてしまう』と感じる」と発言。「ぼやっとしていて、いつの間にか戦争が、ということがないよう、戦争体験を知らない世代にどう伝えていくか、考えたい」と語りました。
 世界各地の戦争で傷ついた子どもたちを治療し、母国に帰す活動に取り組むドイツ国際平和村に、自身がかかわってきた体験を語り、平和村について書いた自著の絵本を朗読しました。
 後半は、3人がそろって登壇してのトーク。ジャンジさんは、「川崎さんの話で、市民の活動が変化をつくっていることがよく分かった。私が取り組む性の多様性の問題でも、市民の運動が社会を動かしている。よく似ていると感じた」と感想を述べました。
 東さんは、「そう遠くない過去まで、女性には参政権がなかった。先人の活動で、男性と対等に政治にかかわれるようになった。国民一人ひとりがつながることで、社会をアップデートできる」と強調。「今日、参加して感じたことや知ったことを、周りに話してみる、そこから始めよう」と呼びかけました。

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