熱中症による死亡者数(東京23区)が昨年を上回るペースで増えています。その大半は高齢者です。エアコンが設置されていても電気代がかかる、リモコンがどこにいったか分からないなど原因はさまざまです。特に独り暮らしの高齢者は、寄り添った支援が求められています。(遠藤寿人)
東京都では今月、熱中症が原因とみられる死亡事件が2件ありました。目黒区と多摩市で、それぞれ男性と高齢の女性が死亡。目黒区の事例ではエアコンが作動しておらず、多摩市の例では設置されていませんでした。
エアコンの利用に補助を 緊急要望を提出
東京都監察医務院によると、今年6月~8月11日までの東京23区の熱中症死亡者数(速報値)は198人。昨年6~9月期の164人を上回るペースです。
死亡場所は屋内が多く191人。屋外が7人。エアコンの利用状況をみると「エアコン無し」が40人(21%)、エアコンはあるが「未使用」が128人(67%)、「使用」が23人(12%)でした。なんらかの理由でエアコンが利用されず、熱中症に至るケースが88%と圧倒的に多いことが分かります。
東京都生活と健康を守る会連合会(窪田光会長・都生連)は今月1日、東京都に対して「生活保護利用世帯への猛暑対策と経済対策の緊急要望」を提出。要望は連日の猛暑で命が危険にさらされているとして「エアコン購入と設置の補助金を出すこと。壊れたエアコンに修理費および買い替えも同様とすること」を要求しました。
生活保護利用世帯ではエアコンがなかったりあっても壊れていたり、電気代が高く使用しない世帯もあると指摘。「夏季手当の新設か、それに準じた電気料金の補助金を出すこと」「物価高に相当する給付金を支給すること」を求めています。
命にかかわる
都生連の阿久津豊事務局長(53)は「都はエアコン購入の補助を国に求めているというが、国が踏ん切りがつかないのなら早急に東京都自身がやるべきだ。物価高騰、光熱費の値上げでエアコンの利用を躊躇(ちゅうちょ)している家庭が多い。今の暑さは命にかかわる。都や国が対処しないと熱中症は防げない。命の危険を放置することになる」と話します。
エアコンと高齢者の実態が知りたく、横浜市磯子区の団地で独居する柴山夏子さん(79)=仮名=を「磯子区生活と健康を守る会」の齋藤敬吾事務局長と訪ねました。
柴山さんの夫は昨年、他界。エアコンは10年ほど前、団地全体で設置したもの。訪れた時は作動していました。
エアコンは「つけている」し、リモコンの操作も「できる」と自信満々の柴山さん。隣の齋藤さんの顔がほころびます。8月に入って2週間ほどリモコンを室内で紛失してしまい、窓を開けて扇風機でしのいだ時期があったからです。「置く場所を決めておかないとですね」と齋藤さん。
部屋は9階の角部屋で西日が直接当たり暑い。「ふらつくことがあって熱中症になるような気がした。急いで首を冷やしたりしたこともある」と柴山さん。「熱中症が怖いので電気代は高くてもやむを得ない」
(しんぶん赤旗2024年8月27日付より)