しんぶん赤旗「主張」 朝鮮人虐殺と知事 

史実を直視し追悼文の送付を

東京都の小池百合子知事は、1923年の関東大震災直後に虐殺された朝鮮人犠牲者らを追悼する式典に今年も追悼文を送らない考えを示しています。

 歴代都知事は式典に追悼文を送ってきました。ところが、小池氏は知事に就任した2016年は送付したものの、翌年からは取りやめました。今回も見送れば8年連続となります。式典を主催する実行委員会(日朝協会東京都連合会などで構成)が、小池氏の追悼文送付拒否を厳しく批判しているのは当然です。

■式典の意味を無視

 追悼式典は9月1日に都立横網町公園(墨田区)内にある東京都慰霊堂そばの朝鮮人犠牲者追悼碑の前で営まれます。追悼碑は関東大震災から50年目の1973年に虐殺の犠牲となった朝鮮人らを悼む目的で当時の実行委員会が寄付を募り都と連携し建立したものです。翌74年から毎年、大震災のあった9月1日に追悼式典を開いてきました。

 小池氏が追悼文を送るのをやめたのは、2017年3月の都議会で自民党の古賀俊昭議員(当時)が碑文の内容などに難癖をつけ、碑の撤去や追悼文送付の再考を求めてからでした。

 小池氏は今月23日の記者会見で、追悼文を出さない理由について「(9月1日に)東京都の慰霊堂で開かれる大法要で、(関東大)震災による極度の混乱下での事情で犠牲となった方も含めて、全ての方々に対して慰霊する気持ちを表している」と、これまでの主張を繰り返しました。

 しかし、朝鮮人犠牲者追悼式典は「人の手によって命を奪われた朝鮮人犠牲者を追悼し、二度と同じ過ちを起こさないことを誓い合う式典」(実行委員会)です。大地震による自然災害で命を失った被災者への追悼と、震災とは別の人災による犠牲者への追悼は意味が異なります。そのため歴代の知事は都慰霊堂の大法要で追悼の辞を述べるとともに、朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送ってきました。小池氏の態度は式典の意味を無視するものです。

■虐殺は歴史の事実

 小池氏は、大震災での朝鮮人虐殺について問われても、「何が明白な事実かについては歴史家がひもとくもの」などと述べ、事実だと認めません。しかし、大震災の発生直後から、朝鮮人が暴動を起こすなどといったデマが流れ、軍や警察、自警団が集団虐殺を行ったことを示す公的資料は数多く存在しています。

 政府の中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門調査会」は09年に関東大震災に関する報告書を公表しています。

 同報告書は「当時の公的機関が作成した記録に依拠」してまとめたもので、「朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた」「武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加えたあげくに殺害するという虐殺という表現が妥当する例が多かった」と明確に認定しています。

 朝鮮人虐殺は動かしようのない歴史の事実です。「極度の混乱下での事情で犠牲となった」などとあいまいにすることは許されません。小池氏は史実を直視し、追悼文を送るべきです。

(しんぶん赤旗2024年8月28日付より)

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