国が2013年から2015年に年金支給額を2・5%減額したのは憲法に違反するとして、2015年に44都道府県の全国年金者組合員ら5297人(東京828人)が39地裁に一斉提訴した年金引き下げ違憲訴訟をめぐり、東京の原告や弁護団らは9月24日、報告集会「希望を開くとうきょうのつどい」を衆院第一議員会館(千代田区)で開きました。
同訴訟は昨年12月15日の兵庫判決を皮切りに、9月12日までに27事案が最高裁判所で上告棄却の判決を言い渡されました。現在8事案が、上告審・上告受理申し立ての段階です。
立正大学名誉教授で法学者の金子勝氏が、「高齢者の人権と平和―憲法の語り部となろう―」をテーマに講演。2024年9月15日時点で、日本の総人口における65歳以上の割合は29・3%を占め、「高齢者は、政治と社会を動かす力を持つ社会勢力である」と、強調しました。
高齢者が「幸福」になるには、日本国憲法の前文と9条が示す「平和」のほか、生命権、自由権、幸福追求権の保障、「福祉国家」が必要だとして、憲法の重要性を説明。憲法9条を基礎に、万国友好を貫く「平和的福祉国家」をつくるため、「憲法を守り、発展させよう」と力を込めました。
国の主張に追従
同訴訟の全国弁護団共同代表の加藤健次弁護士が、「最高裁判決と運動の前進」について解説。最高裁の第二小法廷が5月31日から6月7日の短期間で、東京を始めとする21事案に対し、一括判決を出したのは「極めて乱暴」と批判。その一方で、「期日を指定し、法廷を開いて判決を言い渡したことは、全国で5000人以上が裁判に立ち上がった重みを、裁判所が無視できなかったから」だと、運動の意義を語りました。
判決は、広範な立法裁量を認める堀木訴訟最高裁判決(1982年)の「再確認」にとどまり、「世代間公平」「公的年金制度の財政維持」という、国の主張に追従。加藤弁護士は、「裁判所は憲法や法律に基づき判断すべき。政治的な対立ではない」と強調。「生活できる年金」が世代を超えた共通の要求になっていることを指摘し、裁判闘争の成果を踏まえて「一緒に運動を進めていく」と声を強めました。
政治の姿勢正す
日本共産党の宮本徹衆院議員と、山添拓参院議員が出席。宮本氏は、厚生労働省が今年7月に公表した、5年ごとに実施される年金財政検証に触れ、「この30年間と同じ経済成長のペースでいくと、年金減額が33年も続く。今20歳の人が年金を受け取る頃には、老齢基礎年金が4万8000円くらいの価値になる」と指摘。「減らない年金の政策を掲げ、衆院選を闘いたい」と決意を示しました。
山添氏は、「政府の試算によると、年金積立額は100年後、1京7000兆円になる。積立金だけを増やし、暮らしていけない年金になっている事態をなくすため、政治の姿勢を基から正す闘いが求められている」と、衆院選への意気込みを述べました。