東京都内の全公立小中高校に配置されているスクールカウンセラー(SC)の任用をめぐり、都が「上限4回」と定める更新規定に達したことを理由に雇い止めとしたのは不当だとして、元SCら10人が9日、職員としての地位確認と、この間支払われるべき1年半分の給与など総額約7876万円の支払いを都に求める訴えを東京地裁に起こしました。同日、東京公務公共一般労働組合の分会、心理職ユニオンが記者会見を厚生労働省(千代田区)で開き、明らかにしました。
良い教育は安定雇用でこそ
都教育委員会によると、24年度採用では、「上限4回」を超えた人の応募は1096人で、そのうち250人(22・8%)が不合格、または欠員などが出た際には採用される「補充任用」になり、今年3月末での雇い止めを通告。多くのSCが職を失いました。「補充任用」となった一部のSCは、心理職ユニオンのたたかいや議会での追及で職場復帰できましたが、勤務する学校数を減らされるなどの不利益を受けています。
民間なら許されぬ
訴状などによると10人は5~26年間、都SCとして任用を更新してきました。2023年度は都教育委員会が定める任用の更新上限に達したため公募試験を受けました。9人は「不合格」となり雇い止めとなり、「補充任用」となった1人は4月から採用され勤務を始めています。9人は受け取れたはずの給与を、補充任用の1人は3校から1校に担当校が減らされた分の給与などを求めています。
弁護団事務局長の笹山尚人弁護士は会見で「SCの仕事は専門的で継続が必要とされ、5年以上、まして26年もの長期に働いてきたSCが、今後も働き続けたいというのは当然の期待であって、それを奪うこと自体、大きな問題がある」と指摘。「民間であれば絶対に許されないことが、会計年度任用職員であれば許されるのかを問うことは社会的な意義を持つ」と強調しました。
弁護団長の平和元弁護団長は「雇用する側の好き勝手な雇い止めは認めないという裁判になる。経験を積んで良い仕事をしていようがいまいが更新4回限りというのが今回のケース。不安定雇用では良い教育はできないことを訴え、制度の改革にもつなげたい」と語りました。
専門性軽視に怒り
原告3人が発言。「都の理不尽な雇い止めは、困って助けを求める児童・生徒や保護者の気持ちと痛みを受け止めながら支援に努めるSCの専門性を軽視し、人間の尊厳を踏みにじる行為だ。保護者から『都教委に見捨てられた』と涙された」「面接のみで不合格となり、自分自身が行ってきたことが否定され名誉を傷つけられたことにショックを受けた。納得できる回答が欲しくて裁判に参加することにした」「10年間、この仕事が好きで、やりがいをもって働いてきた。1人のSCの背後にどれだけの子ども、保護者、先生がおり、その不安が積み重ねられていたことが、都教委はどうして想像できないのか。苦しい思いでいっぱいです」と訴えました。
政府は6月、国や自治体の非正規職員について、契約更新に上限を設ける「3年目公募」の規定を削除しましたが、改めない自治体が相次いでいます。