世界中に「戦争の放棄、 戦力の不保持・交戦権の否認」という憲法9条の平和主義の理念を広げ、戦争のない平和な世界を実現したいと、9条条文が書かれた「九条プレート」を各国に贈るプロジェクトが立ち上がってから10月で1年半が経ちました。届けた国は21カ国43団体・個人に上っています。
1年半で21カ国43団体等
「ウクライナ戦争やガザの悲惨な状況にあらためて『戦争は起こしてはならない』という気持ちを強くしました。もし『憲法9条』が世界中にあったなら、戦争は起こらない。9条を世界中の人々に知ってもらい広げたい」
プロジェクトを立ち上げた「九条の碑を建立する会」事務局長の中田好美さんは、結成への思いをこう振り返りました。
「建立する会」は、足立区の「九条の会」や平和団体、市民らでつくられ、9条条文を地球に見立てた鉄球に刻むユニークな碑の建立を2022年6月、足立区内に実現しました。世界で紛争が相次ぐなか、今こそ9条を世界の人々に知ってほしいと、次のステップとしてプロジェクトを結成したのです。9月29日には足立区内で報告交流集会を開き、ジャーナリストの伊藤千尋さんが9条を世界に広げる意義について講演。活動の重要性と今後の方向を確認する場となりました。
プレートの作成費用や活動資金は、インターネットを介して少額ずつ資金を調達するクラウドファンディングや寄付を募り、百数十万円を集めました。プレートは日本語版のほか、中国語、朝鮮語、英語、スペイン語、フランス語の各版を用意。中国語と朝鮮語両版には9条条文の下段に「九条は過去の侵略の歴史を反省し二度と戦争をしないために制定しました」と、記しています。
事務局の中田順子さんは「本来、日本政府こそ、こうした反省の気持ちを積極的に伝えるべきです。プレートを受け取った中国のある政府系シンクタンクの方は『9条はすばらしいけれど、日本政府の姿勢は違いますね』と言われてしまいました。民間の私たちが平和交流をやる意義を改めて感じました」と話します。
ASEAN職員9条は安全保障
プレートは「ピースボートおりづるプロジェクト」や日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)、日本原水爆禁止日本協議会(原水協)などの平和団体や個人有志の協力を得て、各国の平和団体や平和活動家、国際機関などに様々な機会を捉えて贈呈し、歓迎を受けています。
日本AALA代表理事の吉田万三さんがASEAN(東南アジア諸国連合)の担当者にプレートを渡した際、「日本の憲法9条はわれわれにとっても大きな安全保障になる」と告げられました。
国際交流NGO「ピースボートおりづるプロジェクト」の橋本舞さんは、ピースボートが巡る世界各国でプレート贈呈に取り組んできました。橋本さんによると、新たな若者を軍縮・反核運動に参加させるイベントに一緒に取り組んだ国連軍縮事務局の女性スタッフは、「アメリカは核保有国であり軍隊もあるため、すぐに変えることは難しいが、戦争をしないという考えはとても大切。すばらしい憲法です」との感想を寄せました。
核兵器廃絶については「廃絶を推進しない日本政府もアメリカ政府も尊敬できない。これからも、ともに核廃絶へ向けて行動していきましょう」と、エールを交換しました。
プロジェクト代表の大谷猛夫さんは、日本の戦争加害の歴史研究のためにたびたび訪れる中国の「南京大虐殺殉難同胞記念館」や交流のある南京の2つの高校、韓国は「植民地歴史博物館」「全国歴史教師の会本部」に贈呈しています。
大谷さんは「昨年7月に訪れた韓国の植民地歴史博物館では、初めての贈呈だったので受け取ってもらえるかドキドキした。ちょうど朝鮮戦争休戦70周年の日で、受け取ってもらえて本当に嬉しかった」と話します。11月にも中国の施設に贈呈する予定です。
プロジェクトでは今後、12月に日本AALAの協力でラオス、来年はアウシュビッツやベトナムなどに旅行会社の協力を得てプレートを贈呈する予定。さらにプレートの多言語化を進め、個人的なつながりも生かしてもっと海外に広げたい考え。同時に日本政府が9条をないがしろにし戦争準備を強める中、「戦争をしない意思表示として日本中に掲げてほしい」と、プレートの購入を呼びかけています。
自宅、店舗、事務所に
1周年特別価格6千円
プロジェクトでは「九条プレート」(45㌢四方、アルミ複合板製)を国内でももっと普及したいと、1周年特別国内普及価格6000円(国内送料・消費税込み)で販売します。「自宅の外壁や玄関、事務所や店舗の壁などに掲げていただき、『九条』が目に見える街にしていただきたい」と呼びかけています。申込先(日本語版)=電話・ファクス03―3882―3325 Eメールsinsekai@sage.ocn.ne.jp