図書館の未来を住民投票で 4館廃止の是非を問う

 清瀬市が来年4月1日に強行しようとしている、市立図書館6館のうち4館を廃止する計画をめぐって、住民らが「図書館のあり方を市民の意思で決めよう」と、廃止の是非を問う住民投票を求める直接請求署名をスタートさせました。12月7日まで1カ月の署名期間で挑戦する署名数は、清瀬市の有権者の約16%にあたる1万人。10日の署名キックオフ集会では、「民主主義の力で図書館を守ろう」と署名成功を誓いあいました。

直接請求署名がスタート
 市の図書館4館の廃止計画(表)は、今年3月の市議会に突然、提案されました。3920人分もの署名を市民がめ、市長に存続を求めましたが、十分な議論もないままに来年4月1日での廃止が決定されました。
 キックオフ集会に先立って請求代表者で「住民投票で夢のある図書館を創るきよせの会」の5人が会見。関根美保子さんは、「各地域の歩ける距離に地域図書館があるからこそ、多くの人たちが本に親しめる。市が開いた説明会でも、本の宅配を始めるなど、新たなサービスの説明ばかりで、4館を廃止する理由の説明は、ほとんどなかった。参加した大半の人たちから、抗議の声が相次いだ」と語りました。
 市は昨年6〜10月に公募委員を含めた「これからの清瀬の図書館を創造する会」という会議で議論をしたうえで、昨年11月、図書館サービス基本方針(素案)を公表しました。そこにも、地域図書館4館廃止の記載はありませんでした。
 廃止を決めた後に出した市広報も、4館廃止についての記述は、ほとんどありません。廃止は市民にも知られておらず、住民投票に向けた会の宣伝に、「4つの図書館が無くなるんですか?」と驚きの声が多く寄せられる状況だといいます。

民主主義に沿って
 市側は議会答弁などで、市立図書館の利用が減っているとしています。
 これについて会見で請求代表者の一人、室澤隼也さんは「市の図書館全体の蔵書の数は、この30年間、ほとんど増えていない。利用が減っている最大の理由は、資料や蔵書の充実をしてこなかったことだ。市民からも、図書館の本が古い、もっと増やしてほしいという声が多く出ている」と指摘しました。
 関根さんは「市のまちづくり基本条例は、市民の参画を推進するために、計画策定の情報を事前に公表することや、多様な参画の方法を工夫することを定めている。市政は市民のものだという民主主義のあり方に沿って、図書館の存続か廃止かを市民の声で決めたい」と語りました。
 キックオフ集会では、署名を集める受任者がすでに284人に及んでいることを紹介するとともに、この間に市民から寄せられた声などを共有しました。
 受任者の一人、司書と司書教諭資格を持つ田中伊織さん(50)は、「大学図書館について学んだ際、図書館はその頭脳であるだけではなく、心臓でもあると教わりました。学生生活に必要不可欠だからです。地域の公共図書館も、近隣住民には心臓に該当すると考えられます。こども図書館も同様です。全市民の学習、憩いの場を奪うことは許せないので受任者になりました。思いっ切り、取り組みたいです」と語りました。

子どもの意見を市長への手紙に
 キックオフ集会では、子どもたちからも図書館存続を求める要望や、「署名できる年齢じゃなくて残念」という声が寄せられていることが紹介されました。
 4館廃止で、子どもが自転車で通える距離などにある地域図書館がなくなるほか、廃止予定の図書館の一つに「元町子ども図書館」が含まれています。同図書館は子どもの本専門の図書館で、会には「元町図書館は、過ごしやすい雰囲気で、小さい時からずっと使ってきた」という子どもの感想や、「子どもにたくさんの絵本を買ってあげるのは大変なので、元町で借りられてとても助かった」などの保護者の意見が寄せられています。
 同図書館は、書棚や貸出手続きをするカウンターなどもすべて子ども目線で、低く設置されています。寝転がって本が読める読み聞かせコーナーがあり、同じ公共施設内には乳幼児と保護者が過ごせる「つどいの広場」も隣接しています。
 市は、元町子ども図書館は廃止し、清瀬駅に近い駅前図書館のなかに移設して子どものコーナーを設けるとしています。蔵書は3万冊から1万冊に減り、スペースも大幅に減ります。また、商業施設の中に入ることになり、子どもだけでは学校の規則上、行きにくくなったり、駐輪場も有料になるなどの心配も会に寄せられています。
 図書館は子どもから大人まで利用する一方、直接請求署名の対象は清瀬市の有権者に限られます。会では子どもたちにも意見表明権を行使してもらおうと、「市長と市議会議員への手紙」子ども版を用意して(個人情報の記載は年齢のみ)、保護者の同意が得られたものは、市長、市議に届けるとしています。

タイトルとURLをコピーしました