リニアルート上に18校

東京・神奈川・愛知 敷地の直下 掘削も

 JR東海のリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)建設工事は、都市部の大深度地下(地表から40メートル以深)を直径14メートルのシールドマシン(掘削機)で掘り進める計画となっています。本紙が同社の資料をもとに調べたところ、東京・神奈川・愛知の大深度トンネルのルート上には、小中学校や高校、大学など18校が立地していることがわかりました。騒音、振動、地盤沈下など、工事の影響が懸念されます。(丹田智之)

 リニア中央新幹線は、全線の86%がトンネル区間です。起点の品川駅から相模原市に建設される神奈川県駅(仮称)の間には、最も長い「第1首都圏トンネル」(約37キロ)を掘削します。

 2021年10月から23年7月にかけて同社は、北品川(東京都品川区)、梶ケ谷(川崎市宮前区)、東百合丘(同市麻生区)、小野路(東京都町田市)の各非常口から「調査掘進」と称して掘削機を発進させました。

 2番目に長い「第1中京圏トンネル」(約34キロ)の名城非常口(名古屋市中区)でも4月、調査掘進に着手しています。

 22年3月まで東京都内の私立学校に勤務していた元教員の津田山亮さん(67)=仮名=は在職中、リニアのトンネルが校舎前の庭を横切る形で掘られることを知りました。

 「リニアと同じシールド工法による東京外環道トンネル掘削工事では、東京都調布市の住民が騒音や振動に悩まされ、家屋の損傷が見つかり、20年10月には陥没事故も起きた。工事の影響が出てからでは遅いと考え、深刻な問題として捉えるようになった」と振り返ります。

リニア工事 生徒募集にも影響 ❝補償もなし❞

 JR東海が国の財政投融資3兆円をつぎ込み、7兆400億円で進めるリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)建設工事。東京・神奈川・愛知の大深度トンネルは難工事の一つとされ、完成の時期が見通せない状況です。

 大深度トンネルの直上から40メートルの範囲内に小中学校、高校、大学など18校があります。この範囲に校舎などがある学校では、家屋調査が行われます。

 東京都内の私立学校で教員だった津田山亮さん(仮名)は「生徒の募集や広報活動にも影響し、学校にとってプラスになることが何もない。保護者も“陥没するかもしれない学校”に子どもを通わせられないでしょう。どう考えても学校の下を通してはいけない。工事では大量の残土が発生し、各地の自然環境を破壊する。一刻も早く中止してほしい」と強調します。

掘削機の故障やトラブルで工事が大幅に遅れている北品川工区の作業ヤード=4月3日、東京都品川区

生活が壊される

 工事は「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」を根拠に行われ、地上への影響がないことを前提に地権者の同意や補償を不要としています。

 同社は住民に対し、陥没が起きやすい地盤ではなく「適切な施工管理を行うことで、安全に工事を進める」と説明しています。

 東京地裁では東京都大田区、世田谷区、町田市の住民45人が原告となり、大深度地下使用認可の取り消しを国に求める訴訟が続いています。

 原告団長の三木一彦さん(67)=大田区田園調布=は「品川区では掘削機の故障やトラブルで何度も掘進が中断し、10月にはリニアのトンネル工事現場から近い町田市小野路町の住宅の庭に水や気泡が噴出した。適切な施工管理ができているとは言えず、地上への影響がないという前提も崩れた。平穏な生活が壊される危機感を持っている」と述べています。

大深度法廃止を

 本紙の取材に、大深度トンネル上にある学校や教育委員会から複数の意見が寄せられました。

 直下にトンネルが掘られる愛知県内の公立高校は「(JR東海から)掘削前にボーリング調査を敷地内で実施したい旨の説明を受けた」として「安全な工事が実施されることを要望する」とのことです。

 リニアの建設に反対する日本共産党国会議員団は10月、大深度法の廃止法案を参院に提出。大深度トンネル工事が進んでいる場合は、地権者の同意が得られるまで「工事は中断する」とし、損失についても「適正に補償する」という内容です。

(「しんぶん赤旗」2024年11月20日付より)

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