JR東海のリニア中央新幹線(品川―名古屋)事業をめぐり、地下40㍍以深の大深度地下で進むトンネル掘削工事(調査掘進)の直上付近に位置する町田市小野路町の民家の庭に、気泡と水が噴出した問題で、日本共産党国会議員団東京事務所は15日、衆院議員会館(千代田区)で国土交通省と環境省、厚生労働省に、工事との因果関係について聞き取りを行いました。同党の吉良よし子、山添拓の両参院議員、池川友一都議、町田市などの地方議員、リニア沿線ルートに関係する住民らが参加しました。
住民によると、10月22日朝に気泡と湧水の発生を視認。24日昼まで続きました。2020年10月に起きた東京外かく環状道路(外環道)のトンネル工事に起因する調布市の陥没事故も、同工法によるもので、事故前に付近の川で人体に有害な酸欠気泡が発生。同様の事象に、周辺住民から不安の声が上がっています。
問題となった小野路工区は、小野路非常口から約350㍍の調査掘進を予定。そのうち約247㍍、地下45㍍の場所までシールドマシン(掘削機)による掘削工事が進んでおり、現在は周辺調査のため、掘削を中断しています。
JR東海は13日、湧水と気泡の調査結果について、人体や環境に影響を及ぼすようなものではなく、周辺の地下の空洞は確認されなかったと公表。引き続き、工事との関連を調査すると共に、計測や巡回で監視を強化する方針を示しています。
空洞調査、不十分
聞き取りで、山添氏は「国交省として現地調査をしているのか」と質問。国交省は、「民間事業のため、JR東海が責任を持って調査を行う」と答えました。
池川都議は、気泡発生時の掘削機の場所を現地の事務所に確認すると、「明らかに異なる停止位置を説明された」と、事実を明らかにしない事務所の態度を批判。国交省は「地元の方への丁寧な説明を行うように伝える」と返答しました。
田中美穂町田市議は、JR東海がホームページで公開している掘進工事の進しんちょく捗状況の更新が、2週間に1度程度と間隔が空きすぎていることに言及。「どこを掘削しているのか、住民は知るすべがない」と発言し、吉良氏が「公開の頻度を上げるべき」だと続けました。
JR東海が「空洞は確認されなかった」と公表したことに対し、参加した住民は「地上から1・5㍍しか探査できない機器で調査した。本当に空洞がないのか分からない」と指摘。国交省は調査方法について把握しておらず、吉良氏は「無責任だ」と憤りました。
JR東海は、気泡の酸素濃度を地表から3㌢の高さで測定したところ、基準値18%を上回る18・8%と説明しています。しかし、住民らが地表面の気泡を採取して測定すると「1%だった」と報告。「なおかつ、気泡噴出口が、数十時間で1・5㍍は移動していた。緊張感を持って対応してほしい」と訴えました。
湧水の水質調査結果に関して、JR東海はシールド工事で使用している気泡材の成分である陰イオン界面活性剤の含有量は、飲料水の基準値0・2mg/L未満の0・04mg/Lと発表。住民は、「気泡材の成分を知りたい。湧水の成分と一致すれば、因果関係が判明する」など、鋭い質問や意見が飛び交いました。
今年8月、同工事が進む北品川工区(品川区)近くの目黒川から気泡が発生した問題について、国交省は「JR東海が河川管理者である品川区と調整の上、調査を実施している。調査掘進の確認結果がまとまり次第、住民に説明を行う」と答えました。