来年1月から公立小中学校の給食無償化に、都内62すべての市区町村が踏み出す見通しになりました。東京都が市町村への新たな財政支援を決めたことが背中を押しました。背景には学校給食法の〝壁〞を突破し、自民、公明などの抵抗を押し返してきた都民運動や世論、それを背景にした日本共産党の議会論戦と他会派との共同の広がりがありました。一方、無償化継続の課題は残ったままで、来夏の参院選、都議選の大きな焦点になります。
“壁”突破した吉良質問論戦と運動が行政動かす
貧困と格差が拡大し「子どもの貧困」が問題となるなか、学校給食費無償化は都民の切実な要求になりました。日本共産党都議団は2017年以来、学校給食費の負担軽減や無償化の条例を4度にわたり提出。都内の各議会でも共産党議員団の同様の頑張りがありました。そうした中、葛飾区が23年4月から都内自治体に先駆けて無償化を実施し、区部を中心に広がり始めました。
2023年12月都議会で、共産党を含む4会派共同で都の全額補助による完全無償化条例を提出。6会派が賛成した一方、自民、公明、都民ファーストなどの反対多数で決されたものの、都は方針を一転させ、今年4月から無償化する区市町村への2分の1補助(公立学校給食費負担軽減事業)を決定、スタートさせました。
無償化は加速し、23区では4月から全区で踏み出しました。一方、財政力の弱い市町村は経費の残り2分の1を負担できないという問題が大きく立ちはだかりました。9月段階で26市中11市が残りました。
共産党都議団は23区との差が生じる新たな「多摩格差」になりかねないとして、都に対してさらなる財政支援を求めました。市長会、町村長会からも強い要望が出されました。都は9月、来年1月からの無償化の財源として「市町村総合交付金」の増額を決定。これにより市町村の財政負担は、2分の1から8分の1に軽減されることになりました(グラフ)。
これを契機に無償化する自治体が相次ぎ、11月27日に日野市、28日に小金井市が公表し、ついに都内全自治体で無償化が実現したのです。
否定の根拠を崩す
税金を巡る年収の〝壁〞がクローズアップされていますが、学校給食費の無償化を巡っても〝壁〞がありました。学校給食法です。食材費などは保護者負担と書かれているからです。
小池知事も学校給食法は「食材費等の学校給食費は児童または生徒の保護者が負担することとされている」として、同法を盾に無償化を拒否し続けていました。各自治体でもほぼ同様でした。
その壁を突破するきっかけとなったのが、2018年の吉良よし子参院議員の国会質疑でした。
元々、学校給食費の無償化は、憲法26条が定める義務教育の無償化に照らして政府も否定できないものです。そのことを改めて国会の場で光を当てたのが日本共産党の吉良よし子参院議員です。
2018年12月の参院文教科学委員会で、戦後文部省(当時)が〝学校給食費も無償化することが理想〞(1951年3月19日、参院文部委員会)と述べていたことなどを紹介し、国も小・中学校の給食費無償化を目指していたことを明らかにしました。そして、学校給食法で保護者負担とされている食材費について、自治体などが全額補助することも「否定されない」との答弁を引き出したのです。〝壁〞を突破した瞬間です。
柴山昌彦文科相(当時)は「年4451億円が必要になってしまう」と財政上困難との姿勢を見せました。区市町村の理事者側の答弁もその後、変わりはじめ、無償化の必要性を理解するとしつつ、「財政負担」を拒む主な理由としました。
反対続けた自公
都内で初めて無償化を実現した葛飾区でも、区は「学校給食法では給食食材は保護者負担が原則」との法解釈をたてに拒んできましたが、日本共産党区議団は「義務教育は無償」の立場から繰り返し求め、財源も示して実現可能だと要求。2013年度には多子世帯第3子などへの無償化、14年度には就学援助の対象に給食費を追加させるなど、無償化への道を切り開いてきました。
一方、与党の立場にある自民、公明両党は、都、区側と歩調を合わせ、共産党が提案する給食費の負担軽減を求める条例案や住民からの陳情などに反対し、〝抵抗勢力〞の役割を果たしてきました。都議会では、自公に加えて都民ファーストも
同様でした。
無償化継続が焦点
学校給食の無償化は、憲法に基づき国の責任で全国一律に行われるべきものです。日本共産党は文科省に国として無償化するよう繰り返し求めています。政府は「無償化の効果や必要な支援を検証する」としていますが、実施は明言していません。
小池知事は「本来、国が責任を持って行うべきもの」と繰り返し、今後、都として支援を継続するかの方針は明言していません。そのため、市長会などは11月28日、無償化継続を小池知事に申し入れました。
来夏の参院選と都議選は、無償化継続に向けた大きなチャンスです。無償化を切り開いてきた日本共産党の議席が国政でも都政でも増えることが、最大の力になると言えます。