5時間待ち、後日再試も 英スピテスト 機器、運営トラブル深刻

都民団体・議連が調査、公表
 都内の公立中学3年生を対象に東京都教育委員会が11月24日に実施した英語スピーキングテスト(E―SATJ)で、機器のトラブルが多発し、再受験を余儀なくされた生徒が多数いたことが分かりました。同テストに反対する専門家や保護者らがつくる3団体と都議会議員連盟が受験生や保護者を対象に行った「実施状況調査」結果で判明したもので、4日の記者会見で公表しました。公平公正でない状況も多数寄せられており、テスト結果は都立高校受験生の合否を左右するだけに影響は深刻です。

受験生の時間が
 「受験生の大切な時間を無駄にさせられて非常に腹が立ちます」「私たちに非が全くないのに、どうして再受験して時間をまた奪われなくてはいけないのか」。調査にはタブレットの不具合で長時間待たされたあげく、別の日に再受験となった多くの受験生が怒りの声を寄せました。昨年度も機器のトラブルなどで60人が再試験の対象になりましたが、今回の調査では加えて試験の運営問題が露呈した形です。
 調査は試験当事者の中学3年生や保護者、教員らを対象に行われ、グーグルフォームを用いてX(旧ツイッター)で呼びかけました。186件の回答があり、そのうち107人(58%)が中学3年生でした。
 テストは都立高校など230カ所で行い、約7万人が受験。生徒はマイクと一体のヘッドセットを着け、タブレット端末に表示される問題を見て、口頭で解答します。
 調査結果によると、ある会場では20件を超える証言がありました。1室(30人程度が受験)で5台、10台とタブレットの不具合が起きるトラブルが複数の部屋で発生し、「5時間待たされたのに受験できず再受験となった」との回答が複数ありました。

「丸聞こえ」でも同じ問題で実施
 機器の不具合で受験できなかった生徒は、試験中も同じ部屋で待機させられたため、「解答が丸聞こえ」の状態でした。テスト終了後は、トイレや廊下で会話できる状況で、待機させられた生徒は同じテスト問題で受験したとの回答も複数ありました。
 疑問に思った生徒が質問すると「大本の指示がそうなっている」という旨の回答があったとの記述もありました。
 テスト当日の実施責任者や試験監督などの現場スタッフは、労働者派遣業者の全国試験運営センターが派遣。当日も試験監督を募集していたことが確認されています。
 調査結果から運営側の対応が何重にも不適切で、被害が拡大していることが分かりました。試験開始は「手で」合図すると説明していたのに、「口(声)で」合図したために開始がずれたという証言や、試験監督のミスで「22人が再受験となった」との回答もありました。
 再試験となった受験生の保護者は「試験は受けられない。終わりまで拘束。再試験は1カ月後。冗談じゃない。やり直しはきかない。受験生本人のダメージは大きすぎます」と、やり場のない怒りを書き込みました。
 ヘッドセット越しに周りの生徒の回答する声が聞こえ、何を言っているかもわかったという回答も69件(回答の42%)ありました。

カンニング可能示す証言も紹介
 会見では「入試改革を考える会」代表の大内裕和武蔵大学教授が、受験生に面接して直接聞き取った内容を紹介。周囲の解答音声が文章として聞き取れたというもので、解答のヒントになったと証言しました。
 大内氏は「証言はカンニング可能であったことを示しており、都教委の『音は聞こえるが回答に影響はない』という主張を明確に覆す証言だ。都立高校入試活用を中止すべきだ」と語りました。
 また大内氏は会場責任者の不正を内部告発する情報提供があったとして、その内容を詳細に説明。提供された動画には、会場責任者と副責任者が「不具合タブレットゼロ。是が非でもゼロ」「余計なことを書かないでいただきたい」「ほんとほんと」といった会話とともに、試験監督の報告書の一部を消しゴムで消していると思われる動作と音が記録されていました。

テストは中止を
 機器の不具合などの問題を巡って11月29日の都議会文教委員会で、日本共産党のとや英津子都議がトラブルの内容や対応、影響を受けた生徒数や試験会場数などの説明を求めました。都側は2時間の遅延は認めた以外は、「生徒への配慮」を盾に答弁を拒否。生徒や保護者への謝罪もありませんでした。
 会見で議連の風間ゆたか会長(立民)は「これまで以上に多くの中3生がまともな状況でテストを受けられなかったことが明らかになった。受験生の人生に関わる問題で、一般入試なら全員満点か無効だ。都教委にしっかり調査し、公表を求める」。事務局長のとや都議は「ずさんな試験運営で生徒が多大な被害を受けた。都教委は事実と原因を公表・謝罪し、不公平な試験結果の入試活用を中止するよう強く求めたい」と話しました。
 日本共産党の斉藤まりこ、アオヤギ有希子の両都議も会見に参加しました。

中学校英語スピーキングテスト
 テストは都教委が都立高校入試における英語の「話す力」の評価を目的に公立中学3年生を対象に22年度から導入し、テスト結果は都立高校の入試に活用されます。
 昨年度までベネッセコーポレーションが運営。「音漏れ」や不受験者の扱い、採点方法などを巡って公平・公正性に問題があるとして反対の声が強まる中、同社が撤退。今年度から英国の国際文化交流機関「ブリティッシュ・カウンシル」が引き継ぎました。対象を中学生の全学年に拡大しています。
 都は今年度43億円、6年間で210億円もの巨費を投じる予定です。

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