JR東海が進めるリニア中央新幹線事業の地下トンネル掘削工事(調査掘進)をめぐり、第一首都圏トンネル「北品川工区」(品川区)と「小野路工区」(町田市)で、気泡や水の噴出といった事象が起きている問題について、日本共産党は2日、前回11月15日に続き、衆院第2議員会館(千代田区)で国土交通省に工事との因果関係について聞き取りを行いました。
日本共産党の山添拓参院議員、白石たみお都議、谷川智行・党政策委員会副委員長、品川区や町田市の議員、リニア沿線ルートや東京外かく環状道路(外環道)の工事に関係する住民らが出席。JR東海は、「この日は都合がつかない」と欠席。同党は国交省に対し、再三にわたりJR東海の同席を求めていますが、国交省は「JR東海は民間企業だから(出席を促していない)。JR東海の事業に関する質問は、そちらに直接お尋ねいただきたい」と、冒頭で述べました。
地下40㍍以深を巨大なシールドマシン(掘削機)でトンネルを掘り進める「北品川工区」では、今年8月2日、シールドマシン発進地点の立坑「北品川非常口」付近を流れる目黒川から、気泡の噴出が確認されました。国交省によると、JR東海は10月9日に目黒川の気泡を採取し、分析した結果、酸素濃度の数値が4%と判明。国交省が数値を把握したのは、11月上旬でした。同工区は気泡発生後も工事を止めず、当初の予定に基づき11月4日に調査掘進を完了しています。
相談の専門家はJRの内部組織
酸素濃度は、18%未満が酸素欠乏症を起こす基準。4%は非常に低く、吸入した場合、ひと呼吸で失神・呼吸停止となり、死に至る数値です。
国交省は水質調査について、「JR東海は河川管理者の品川区や専門家と相談しながら、調査結果をまとめている」と、繰り返し報告。山添氏は、「国交省としての主体性が見えない」と、厳しくただしました。
のだて稔史品川区議は、目黒川の水質調査に関し、シールドトンネル工事で採用されている気泡材の成分「陰イオン界面活性剤」の含有について質問。国交省は、「水質基準を満たしている」とのみ返答。界面活性剤の含有は、水質調査の項目に入っていないことが明らかになりました。
白石都議は、「酸素濃度4%は、密室空間に溜まると即死レベル。目黒川では気泡として確認できるが、地上で発生すると見えない。命に関わる重大な問題であるという認識を持つべきだ」と強調。JR東海が、工事と気泡噴出の事実関係について相談している「専門家とは誰か」との質問に対し、国交省は「JR東海の『トンネル施工検討委員会』の先生方」と答え、JR東海の内部組織であることが判明しました。
小野路工区では濃度わずか1%
「小野路工区」で進むトンネル工事の直上付近では、10月22日から24日にかけて、住宅の庭に気泡と水が噴出。地域住民らが気泡を採取し、酸素濃度を計測すると、数値はわずか1%。JR東海の工事関係者は、気泡の酸素濃度を地表から3㌢の高さで測定し、基準値を上回っていると説明しています。
参加した町田市の住民は、「町田市立野津田公園の北側道路に、11月6日から10日間ほど水があふれた。水道水だと言われたが、界面活性剤が含まれていた。近くの住宅では、井戸の水位が目視できるほど、どんどん下がっている」と訴え。山添氏は、「JR東海はそのことを把握している。国交省として、JR東海に説明を求めるべきだ」と要望しました。
小野路工区では、工事と住宅の庭に噴出した気泡・水との因果関係を調査するため、掘削工事は一旦、停止しています。