地球規模の戦略 日本も組み込む
在日米軍横田基地(東京都多摩地域)に今月4日、太平洋宇宙軍指揮下の在日米宇宙軍が発足しました。米宇宙軍は、中国やロシアに対抗し、宇宙空間での「優勢」を確保することを目的に2019年12月に発足。日本と自衛隊を米軍の地球規模の宇宙戦略に組み込む動きが強まっています。(佐藤つよし)
陸海空海兵隊4軍、沿岸警備隊、特殊作戦軍に次ぐ六つ目の「軍」として発足した米宇宙軍は、米国防総省のすべての人工衛星を管理し、衛星通信ネットワークを運用します。宇宙空間や地上の監視、中国やロシアを想定した「潜在的な敵対者」から地上と軌道上のアクセス妨害からの防御、戦域内の通信確保と陸上、航空、海上部隊のための気象や脅威情報の提供、弾道ミサイル発射の監視、ミサイルによる奇襲攻撃の防御などを実施します。
空自にも作戦群
4日に横田基地で行われた発足式で、在日米軍司令官兼第5空軍司令官のスティーブン・ジョスト中将は、過去数年間で日本の防衛省が、多国籍演習で米宇宙軍とともに一体となった自衛隊の複数の宇宙部隊の設立によって目覚ましい重要な前進を遂げたと強調。「日米が並んでお互いの宇宙能力の前進を継続するなかで、在日米宇宙軍の創設は、われわれの多領域能力の発展と日本と地域の防衛の全体への貢献の次のステップだ」と述べました。
航空自衛隊は22年3月、米宇宙軍に対応する宇宙作戦群を府中基地(東京都府中市)に発足しました。25年度予算概算要求では他分野も含めて次期軍事衛星の整備など宇宙作戦能力強化に約5974億円を計上。宇宙作戦群は航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への名称変更にあわせて、将官が司令官の「宇宙作戦団(仮称)」への格上げも計画しています。
在日米宇宙軍の発足を前にした11月5日には、米宇宙軍が運用する広域帯地球規模通信衛星ネットワークに日本が接続するための協定を日米間で締結するなど一体化を加速。内閣府宇宙開発戦略推進事務局は20年12月、米宇宙軍との間で種子島(鹿児島県)から米軍の宇宙領域認識光学センサー2基を日本の準天頂衛星システムに搭載し23年と24年に打ち上げることで了解覚書を締結しました。横田基地には23年1月と5月に、日本の衛星に搭載する米軍の貨物が輸送されています。
際限ない包囲網
米軍の宇宙領域での優勢を確立する態勢は、日本だけにとどまりません。韓国には22年12月、米太平洋宇宙軍指揮下の在韓米宇宙軍が発足しています。
ヨーロッパでも北大西洋条約機構(NATO)に加盟し米軍約1万人が駐留するポーランドが、日本と同時に米軍の衛星通信ネットワークに接続するための協定を締結。19年4月には同国の宇宙機関は、米戦略軍と宇宙サービスとデータを共有する協定に署名しています。
在日米宇宙軍発足は、宇宙領域でも米軍が構築する東西からロシア、中国を包囲する態勢の一環に日本を組み込むものとなっています。
宇宙軍事利用やめよ
東京平和委員会の岸本正人事務局長の話 宇宙の軍事利用に向けた体制づくりに危険を感じます。在日米空軍横田基地への米宇宙軍の創設は、日本防衛のためでなく日米安保条約の枠を超えるもので問題です。国連で決議された「宇宙条約(1966年採択)」では、宇宙の軍事利用は一切禁止されています。在日米軍基地の機能強化・拡大、宇宙の軍事利用を直ちに中止することを日本政府に求めます。
(「しんぶん赤旗」2024年12月20日付より)