世界に平和求める声を 平和祈念館 すすめる会が緊急アピール

 東京大空襲から80年を迎える節目を前に、空襲犠牲者を悼み、都民の戦争体験を後世に継承する市民団体「東京都平和祈念館(仮称)」建設をすすめる会は1月20日、都庁で記者会見を開き、都と都議会に対して同館建設の具体化を求める「緊急アピール」を発表しました。

 アピールでは、「今こそ東京空襲の記憶をよみがえらせ、語り継ぐための祈念館を建設することで、平和を求める声を大きく世界に発信すべき」と訴え。25年以上にわたり、事実上「凍結状態」の祈念館建設に向け、直ちに踏み出すよう強く求めています。
 アピールの取り組みは、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏や映画監督の山田洋次氏など8人が呼びかけ人となり、昨年11月から開始。現在までに、エッセイストの海老名香葉子氏や俳優の吉永小百合氏など、個人236人と83団体から賛同を得ています。
 平和祈念館(仮称)の建設をめぐる運動は、1979年に文化人12人が都知事選予定候補者に提出した、「空襲・戦災記念館」を東京に設置する公開要請書から始動。検討の結果、都立横網町公園内(墨田区)に建設が決定しました。
 都は90年代に記念館の建設に向け、約1億円の公費を投入し、空襲体験者330人の証言映像を制作。多くの人々から約5000点もの遺品が寄せられました。
 しかし、立地や展示内容案に関して都議会で反対意見が上がり、98、99年に建設予算案は可決されたものの、予算特別委員会の付帯決議により凍結。「都議会の合意を得た上で実施する」として、多くの映像と資料は東京都庭園美術館(港区)の倉庫に眠っています。

戦争許さない世論広げる
 都は22年、証言映像と資料のデジタル化を図り、活用・公開を進める方針を表明。昨年開催した「東京空襲資料展」で、122人分の証言映像と一部のデジタル化した紙資料を公開しました。
 記者会見では、同すすめる会代表世話人で「緊急アピール」の呼びかけ人でもある児玉洋介氏(72)が、会見の趣旨や祈念館が事実上凍結されるまでの経緯を説明。昨年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル賞を受賞したことに触れ、「都が平和祈念館(仮称)の建設計画を大きく進めることが、世界の願いに応える道である」と主張。「夏には都議会選挙がある。アピール内容を都議の方々にも賛同してもらい、都議会を動かしてほしい」と述べました。
 同すすめる会代表世話人の柴田桂馬氏(84)は、ウクライナとパレスチナの情勢を踏まえ、「非人道的な戦争を語り継ぎ、絶対に繰り返してはならないという世論を高め、社会の改革をしていくことが今、急激に求められている」と、緊急アピールの意義を語りました。
 同すすめる会はアピールへの賛同をさらに広げるため、ウェブ署名の整備や都議会への請願を予定。23年から発行している空襲被害者の体験記をまとめたパンフレット『語り継ぐ東京空襲』の普及も、促していく構えです。

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