東京都が1月31日発表した2025年度予算案は、都税収入が前年度比5431億円(8.5%)も伸びたのを受けて、一般会計で9兆1580億円(8.3%増)、特別会計・公営企業会計を合わせると17兆8497億円と過去最高になりました。その内容を見ました。 (東京都・川井亮)
福祉
シルバーパス運動で負担軽減
70歳以上高齢者の足となっているシルバーパス(バス・都営交通の乗車証)は今年10月以降、所得135万円を超える人の負担額を現行の年2万510円から、1万2000円に4割軽減します。
石原都政が00年度に自民党・公明党などの賛成で全面有料化して以降、日本共産党は負担軽減を求めて繰り返し条例提案(自公、都民ファーストの会などが否決)し、多くの都民と運動してきました。今回の負担4割軽減はこの運動を反映したものです。
保育では9月から第1子の保育料無償化に踏み出します。また18歳までの子どもの医療費助成では10月から所得制限を撤廃します。どちらも共産党都議団と都民の運動が繰り返し求めてきたものです。
補聴器購入費補助は6・5億円を計上し、52区市町村で実施できるようにします。
都民の運動と共産党都議団が切り開いた成果が盛り込まれる一方、高過ぎる国民健康保険料(税)の引き下げ、一人親家庭や障害児家庭の児童育成手当、障害者福祉手当、障害者医療費助成などの拡充を求める都民の運動が広がっていますが、予算案では背を向けています。
暮らし・教育
都営住宅新設・家賃助成に背
米や野菜をはじめ物価高騰が続き、都民の暮らしを追い詰めていますが、予算案の物価高騰対策は総額1671億円。前年度当初予算に比べ、わずか52億円(3・2%)増にとどまり、極めて不十分です。
賃貸住宅家賃も高騰している中、応募者が殺到している都営住宅は00年度から26年間連続して新規建設ゼロ。都民が求めている家賃助成にも背を向けています。
スタートアップ(新興企業)支援予算は525億円と、前年度当初予算に比べ70億円も増額したのに、商店街振興予算は51億円と9年連続で据え置き、中小企業の賃上げなどの奨励金は1400件分と前年度から増えていません。
共産党都議団が提起した痴漢ゼロ対策では、被害実態把握調査や普及啓発予算を3年連続で計上しました。
奨学金返済の負担が重過ぎる問題では、借りていた人が公立・私立学校の教員や都内自治体の技術系職員になった場合に、都が肩代わりして返済する制度を始めます。共産党都議団の質問が実ったものです。
都予算案は一方、受験生や保護者らから「公正性が保てない」と中止を求める声が上がっている中学校英語スピーキングテストに、引き続き38億円を盛り込みました。小池百合子知事が昨年の知事選で公約していた中学校の35人学級の予算は、盛り込みませんでした。
開発
「世界最大」の噴水に26億円
都予算案では、「無駄遣いだ」と都民の批判が広がっている臨海副都心・お台場への「世界最大級」噴水の設置に26億円も計上しました。
都庁舎などに映像を映すプロジェクションマッピングに16億円、23年度からの累計で64億円もつぎ込みます。
IR(カジノを中核とする統合型リゾート)誘致の調査費は、20年度から5年連続で未執行なのに、25年度予算案でも1000万円を計上しました。
陥没事故を起こした東京外環道や、住民の反対を押し切って強行する特定整備路線など大型道路建設に510億円をつぎ込みます。
築地市場跡地や新宿駅周辺をはじめ財界の目先の利益を優先する大型再開発に240億円を計上。樹木伐採と超高層ビル建設に都民の批判が広がっている神宮外苑も、予算案と同時に発表された長期計画「2050東京戦略(案)」で新宿駅周辺や東京駅周辺などと同様に「魅力と活力あふれる拠点の形成」と位置づけています。
(「しんぶん赤旗」2025年2月4日付より)