杉並区の岸本聡子区長は1月31日、2025年度当初予算案を発表しました。一般会計は前年度より227億1100万円(10・2%)増えて2456億300万円です。「住まいは人権」の考えのもと、公約でもある家賃補助制度の創設や区民参加型による防災対策、子どもの居場所づくりなど各分野で前進がみられ、岸本区長の特色が色濃いものとなっています。予算案は12日開会の第1回定例会で審議されます。
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家賃補助制度で今回対象となるのは、区営住宅の抽選に落選した低額所得者のひとり親世帯と子どもが3人以上いる多子世帯で、1世帯年30万円、最大2年まで助成が受けられます。区営住宅抽選に落選した低額所得世帯を対象にするのは23区初。区営住宅に希望しても入居できない区民が少なくなく、そうした区民の住宅確保支援とともに、空いている民間賃貸住宅を活用する狙いもあります。
また転居費用が準備できない低所得者向けに、単身世帯15万円、2人以上の世帯には20万円を助成する制度も新設。さらに住宅確保に特に配慮を要する区民が入居できる「セーフティネット専用住宅家賃低廉化補助」(月額最大4万円、原則10年間)制度の予算を2・5倍に拡充します。
岸本区長は会見で「住まいは人権。安定した住まいを確保することは健康で文化的な生活を営む上で欠かせない」と強調しました。
子どもの居場所 区施設無料化へ
岸本区長が力を入れる子どもたちの居場所づくりでは、前区政の児童館廃止計画を見直し、現存する25カ所を存続した上で、空白の7中学校区に新たな児童館の整備を検討。「中・高校生機能優先館」を27年度に新たに7館整備する計画で、中高生の意見を聴く経費を盛り込みました。
児童館・学童クラブ以外の受け入れ先として小学校内で実施する「放課後等居場所事業」を2027年度までに全校への拡充を目指し、新たに3校で実施する人件費も入った委託経費を新年度は7874万円を計上します。日曜・祝日の校庭開放の拡充や小学校始業前の朝の居場所の試行実施など、多様な居場所づくりを進めます。
「子ども食堂」への支援について、多様な子どもの居場所を担っていることが分かったとして、これまでの社会福祉協議会による支援に加え、区が直接支援します。新年度予算には会食形式で食堂を開催する運営団体に月4万円(年額上限48万円)、配食・宅配(加算)には年額72万円を助成。新規に立ち上げる団体には50万円を助成します。いずれも新規で、全体で1420万円を盛り込みました。
また、区立体育館やプールの子ども利用料を小中高生については26年度から無料にする方針を公表。26年度から小中学生100円を無料にし(夏季を除く)、対象を高校生までに拡大します。
岸本区長は「どこにも居場所がないと感じる子どもが生じないよう、身近な地域に選択可能な居場所を用意していく」と述べました。
防災対策を拡充 区民参加予算で
岸本区長は「阪神淡路大震災から30年目の節目の年として、改めて一人ひとりが災害の備えができるように取り組む」と述べ、防災対策を強化すると表明しました。
区長が重視して進めてきた、予算の一部の使い道を住民自身の参加で決めていく「参加型予算」に4346万円を計上。▽区立公園で太陽光発電と蓄電▽LEDソーラー街路灯給電スポットを駅前広場設置▽水害対策にグリーンインフラの活用―を行います。
また、防災用品カタログギフトを全世帯に配布する13億5000万円を計上。一世帯当たり3000円分の防災・防犯グッズを選べます。カタログには防災・防犯に関する情報も掲載し、保存版のマニュアルとしても活用できます。