田村委員長の質問 所得の再分配原則を問う
日本共産党の田村智子委員長は21日の衆院予算委員会と25日の同財務金融委員会で、税制の基本原則の立場から消費税が持つ根本的ゆがみを指摘し、今こそ消費税減税の議論を行うべきだと主張しました。
消費税が累進性破壊衆院予算委 21日の論戦
田村氏は課税最低限―いわゆる「103万円の壁」の引き上げについて、「生計費非課税の原則から引き上げは当然だ」としたうえで、「年収103万円にも届かない最も苦しい状況にある何千万もの人たちが置き去りになる」と指摘。独自に計算した勤労者世帯の年収別税負担率を示し、「中間所得層も含め最も重い税金は消費税だ。年収200万円以下では所得税の負担率0・6%、消費税は10倍以上の6・3%になる」と追及しました。
石破茂首相は「負担の面からみればそういう議論もある」とする一方、「低所得者には負担よりも多い給付をしている」などと述べました。
田村氏は「聞いているのは税の問題だ」とし、所得税に対して消費税の負担の方が圧倒的に重いとして、年収200万円世帯で所得税は年1万2000円、消費税は12万6000円もの負担になると指摘。「消費税を不問にし所得税の減税だけでは負担の軽減にならない」と主張しました。
田村氏は「物価高騰はそのまま消費税に反映する」と強調。「生活を守るための税制をどうするかというとき、所得税の課税最低限の引き上げだけに議論がフォーカス(焦点化)されている。これでいいのか」と疑問を投げかけました。石破首相は「物価上昇で消費税の負担が増える」と認めざるを得ませんでした。
さらに田村氏がグラフ(図)を示し、収入1000万円近くまで税負担全体の累進性がなくなっていると指摘。「負担能力に応じた税負担の実現は、憲法25条、生存権を税制の面から保障する原則だ。ところが逆進性があまりに強い」と強調すると、石破首相は税制のあり方については答えず、またしても「所得再配分も見て判断すべき」だなどと述べました。
田村氏は「税制のあり方として答弁できない」と批判。「消費税の負担が税の負担としては最も重い。その逆進性が税負担の公平性を著しく損ない累進性を失わせている。消費税の減税こそ議論すべきだ」と迫りました。ここでも「低所得者への給付の配慮」を強調した石破首相に対し田村氏は、「高額療養費の引き上げまでやろうとしている。社会保障を言い訳にするのはやめるべきだ」と批判。第2次安倍政権で2度にわたり消費税が引き上げられた一方、法人税率は引き下げられたとし、大企業はじめ「超富裕層への応能負担を徹底すれば消費税5%減税は十分にできる」と主張しました。
「社会保障のため」はごまかし石破政権の答弁は自己責任論そのもの衆院財金委 25日の論戦
財務省作成の「もっと知りたい税のこと」には、税の原則として「公平、中立、簡素」を挙げ、「公平」とは「経済力が同等の人に等しい負担を求める」「経済力のある人により多い負担を求める」と説明しています。
「この応能負担の原則は、戦後の日本の税制の土台だ」―。こう強調した田村氏は、消費税の逆進性があまりに強く、勤労世帯で所得800万円まで税負担全体の累進性が失われていることを示す資料を改めて示し、「これは、財務省のいう『税の公平』から見ても異常ではないのか」と迫りました。
加藤勝信財務相は「どういう形で算出しているのかよくわかっていない」などと答弁不能に陥りました。
さらに田村氏は、“低所得者には社会保障で再分配している”などとする政府のごまかしに鋭く切り込みました。
所得再分配とは「経済力のある人により大きな負担」をしてもらい、社会保障などの給付を必要な人に再分配する仕組みです。田村氏は「応能負担原則、税負担の累進性は、税制の所得再分配が機能することによって格差を縮小する。これが非常に大切な役割だが、税制全体でこの機能が失われている」と追及しました。
それでも「消費税は社会保障の財源となっている」などと強弁した加藤財務相。田村氏は、消費税の税率引き上げによって、今や消費税の税収が、所得税・法人税の税収を上回る事態となり、そのことによって税負担全体の累進性がなくなり、税制の所得再分配機能が失われていると指摘し、「『消費税は社会保障の財源だ』などと言って現状を問題視しないのは、低所得者への社会保障を低所得者の重い税負担で支えることを当然とする自己責任論そのものだ」と厳しく批判しました。
生計費非課税の原則
生計費非課税の原則に立つのかどうか―。
田村氏は、所得税の課税最低限の引き上げ=所得控除の引き上げが焦点の一つとなっているが、「所得控除とは何か」と述べ、国税庁の税務大学校教官の研究論文「所得控除の今日的意義」を紹介しました。
論文は「担税力とは何かという点については、基本的には租税を負担する能力のことを指すものであり、憲法25条の生存権すなわち『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を保障する水準が担税力の有無を判断する基準として有意であることに、おそらく異論はないであろう。このため、所得税の負担のあり方を考えるに当たっては、最低限度の生活を維持するために必要な部分を除いた残余に対して課されるべきである」としています。
田村氏は、所得税の所得控除の考え方は、生存権の保障する水準である最低生活費を除いて課税する、つまりは生計費非課税を原則としていると強調。所得税で最低生活費を除いて課税しても、消費税の増税によって、健康で文化的な生活といえない状況にある人にも消費税の負担が重くのしかかっていると指摘し、「物価高騰がそのまま税負担に反映する消費税に指一本触れないことは、最低限の生計費には課税しないという原則に著しく反する」とただしました。
激しい逆進性が問題とされ、税の原則を破壊している消費税―。田村氏は、「応能負担、生計費非課税の原則に立って、税制の現状を徹底的に見直す議論が今こそ求められている」と強調しました。
さらに、自民党、公明党、国民民主党の間で行われている所得税の課税最低限の引き上げの議論は国民の見えないところで金額をどうするかについての議論だけで、生計費非課税の原則の議論が置き去りにされていると言わざるを得ないと指摘。「憲法が保障する最低生活費はどうあるべきか。課税最低限とはどういう原則に立つものなのか。そもそものところから検討し、消費税の負担も含めた税負担のあり方を国民の前で議論すべきだ」と強調しました。(昨日付け記事はこちら)
(「しんぶん赤旗」2025年2月27日付)