都議会は2月26日に本会議を開き、小池百合子知事の施政方針に対する各会派代表質問を行いました。日本共産党からは清水とし子都議(日野市選出)が立ち、都政の重要課題で小池百合子都知事をただすとともに、物価高騰から都民の暮らしを守るための様々な提案を行いました。

清水都議は1月の消費者物価指数について、コメが7割上昇で過去最高、キャベツも3倍に跳ね上がり、今後も多くの食品の値上げが予定されていると指摘し、「今こそ『くらし第一』の都政への転換が必要だ」と主張しました。
中小企業の賃上げ
暮らしの問題でまず取り上げたのが、大企業に比べて進まない中小企業の賃上げです。実質賃金は3年連続マイナスで、大企業が空前の利益を上げても中小企業の賃上げに結びついていない実態があります。
清水都議は共産党都議団が拡充・改善を求めた「魅力ある職場づくり推進奨励金」制度について、賃上げへの支援が増額されたのに、受けられる事業者数は全く増えていないと指摘。同様の制度がある他県に比べて要件が厳しく、支給までの期間が1年以上と使い勝手の悪さを批判。打開のために共産党都議団が提出する、使い勝手の良い「中小企業賃上げ応援助成金条例案」への賛同を呼びかけました。
都が100%財政負担する事業などで4次下請けの労働者が都内の最低賃金すれすれで働かされている事例があるとして、実態調査を要望。区の業務委託などの労働者報酬下限額を設定し、計画的に引き上げている世田谷区の例を挙げ、都の「公契約条例」制定を提案。発注事業で対象となる2万社の約9割を占める中小企業の賃上げに大きな波及効果があると強調しました。
山下聡財務局長は「来年度以降、都社会的責任調達指針が適用される案件では、取引関係法令等の遵守などをサプライチェーンを含む受注者に義務付け」ると答えました。
高齢者施策
共産党都議団が強く求めてきた高齢者のくらし支援について「前向きの変化が生まれ始めたことは重要だ」と評価する一方、高齢者のくらし支援の予算は389億円で予算総額の0・2%にすぎないと指摘。「長寿社会に対応するため、予算を5倍、10倍に増やす必要がある」と提起。
その上で四半世紀にわたる都民運動で4割軽減が実現したシルバーパスの抜本的な負担軽減の検討、知事公約の多摩モノレールへの適用を求めました。
高齢者の補聴器購入費助成について、都内の全自治体で上限額14万4900円の助成が実施できるよう、財政力の弱い多摩・島しょへの財政支援を思い切って増額・拡充するよう求めました。
山口真福祉局長はシルバーパスの改善について「高齢者施策全体を総合的に議論する中で検討する」、補聴器購入補助については「地域の実情に応じた活用が進むよう引き続き取り組んでいく」と答えました。
清水都議はさらに、医療費の窓口負担や介護保険料、後期高齢者医療の保険料軽減に踏み出すよう要望。一般家庭や小規模事業所の上下水道料金の10%の値下げ、国民健康保険料(税)の一人3万円の引き下げと子どもの均等割料ゼロなどを提案しました。
子ども支援
共産党都委員会が実施する「子ども・学生公共交通運賃調査」には、「子どもが3人いるので、動物園や博物館、水族館などに出かけるのも、旅行に行くにも躊躇(ちゅうちょ)してしまう」、塾や進学先をあきらめたなど深刻な声が寄せられています。
交通費の負担が理由で何かを「あきらめたことがある」「あきらめかけたことがある」という回答を合わせると、60%に上っています。
清水都議は「交通費の負担が子どもたちの体験格差を生むことがあってはならない」と述べ、小児運賃の対象年齢を18歳まで広げ、一律50円に引き下げるなど、通学定期を含む子どもの運賃引き下げを都内の交通事業者に働きかけること、都営交通が率先して踏み出すことを求めました。
また都が行った「子どもの生活実態調査」で、生活困難な高校生年齢の子どもの2割以上が、ほぼ毎日2食以下しか食べていない深刻な実態を紹介し、都立高校の給食実施を提案。「物価高騰の影響が修学旅行や制服、副教材、学用品など教育費の負担をさらに重いものにしている」とし、それらへの補助を実施する区市町村への財政支援に踏み出すよう求めました。
持続可能な東京への転換を
清水都議は家賃や住宅価格が高騰している問題で、「都が誘導した再開発で投機マネーが流入している」と指摘し、「財界ファースト」の大型開発を見直して、公的住宅や家賃補助で住む権利を保障することを提起しました。
清水都議は国による「都市再生緊急整備地域」や「国家戦略特区」、都による「再開発等促進区」や「総合設計制度」など、事業者がやりたい放題に開発できるようにする規制緩和を行い、税制優遇や都有地の提供など破格のサービスも提供していると指摘。その結果、富裕層向け超高層ビルが乱立し、投機的な転売で住宅価格を押し上げているとして、規制緩和の見直しと不動産投機の規制を求めました。23区内の家族向け家賃額は、前年より3万円上がり21万円を超えました。共産党都委員会が実施した都民の住宅アンケートでは、住宅費負担が「重い」「とても重い」は合わせて8割に上っています。
清水都議は知事が施政方針で提案したファンドを活用して空き家を活用する「アフォーダブル住宅」について、「供給の規模も微々たるもので、低所得者向けにもならない」と指摘。▽100万世帯に月1万円の緊急家賃補助▽応能家賃の「都型社会住宅」や都営住宅の計15万戸供給―を提案しました。
谷崎馨一都技監は「土地利用の規制や誘導により都市の活力を支える拠点整備」などをしていると述べ、都が再開発を誘導していると認める一方、再開発と住宅高騰の関係については答弁しませんでした。
巨大噴水整備
新年度予算案は、都税収入が24年度当初予算に比べて5400億円以上増えて史上最高で、予算総額も過去最高を更新しました。スウェーデンの国家予算に匹敵する巨大な財政力を全面的に使って、都民のくらしを守り抜くことが求められています。ところが予算案の物価高騰対策は微増にとどまり、予算総額のわずか0・9%です。
一方、都庁などに映像を映し出すプロジェクションマッピングに3年間で64億もの税金を使い、お台場に世界最大級の噴水を26億円かけて整備します。
清水都議は「光を当てるところが違う」と批判。巨大噴水の建設計画について「都民の意見はいつ聞いたのか」「情報開示された文書の中には知事に説明や報告した資料はひとつもないのに、2023年の1月に知事に報告したと答弁している」「記録を残さず、知事に相談、報告、意向確認する場が都庁には存在しているということか」とただしました。
松川桂子港湾局長は「局で方針を固めた後、知事に口頭で説明を行った」と答弁。記録はないことを事実上認めました。
老朽インフラ対策
埼玉県八潮市の道路陥没事故は、上下水道、道路などインフラの維持管理の課題を浮き彫りにしました。ところが小池知事は、103年にわたり建設局や上下水道局などに技術支援や職員の技術力向上を図る人材育成の役割を担ってきた「東京都土木技術支援・人材育成センター」を廃止し、政策連携団体の道路保全公社に業務移管することを決めました。
清水都議は「インフラ維持管理などの技術の継承発展と技術者不足への対応が急がれている時に、重大な逆行だ」と批判し、廃止方針の撤回を要求。市町村に対する腐食した下水管の更新工事への補助率の引き上げを求めたのに対し、佐々木健下水道局長は「引き続き必要な予算を確保し、市町村の取り組みを後押ししていく」と答えました。