戦後まもなく計画 約80年経てなぜ今… 国からも巨額の税金

中学校を真っ二つに分断する大型道路が東京都練馬区で持ち上がっています。戦後まもなく計画された都市計画道路です。約80年を経て、なぜ今…。各地で進む大型道路づくり。国からも巨額の税金が注ぎ込まれています。(芦川章子)
「現実的じゃないよ。何十年も前ならできたかもしれないけれど。地元の人たちは皆、批判的だね」。妻と散歩中の男性(76)は言いきります。
訪問看護の仕事中の女性は「利用者さんの家も道路で半分削られるそう。学校は校舎も分かれるし、校庭も狭くなるし、生徒さんがかわいそう」。住民たちは口々に困惑と怒りを語ります。
予定地は、区立大泉第二中学校と周辺地域です。昨年末、補助135号線と補助232号線の二つの大型道路が中学校を突き抜ける取組方針を区が発表しました(地図参照)。今年度中の決定を狙っています。
混雑緩和に疑問

道路が計画されたのは、135号線は1947年、232号線は66年です。当時はほぼ農地だった土地は今、学校を囲むように住宅が立ち並んでいます。
「大二中を分断する道路計画を考える会」の鈴木達夫代表は「そんなむちゃな話、実行されるはずがないと誰もが思っていたから、寝耳に水です。生徒や住民の被害は計り知れない」と怒りをあらわにします。
建設理由の「交通混雑の緩和」にも疑問の声が上がっています。「交通量は減っている。行政は直近の交通量調査を避け続けている。まったく道理のない計画です」
今回の計画は、都が集中的に推進する「優先整備路線」の一つです。
都は「都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画」を2016年、策定しました。10年以内に着手を目指す路線として、都内320区間、226キロメートルを定めました。
1メートル6千万円も
25年3月現在、事業認可が出たのは全体の2割以下です。
仮にすべてつくった場合、総事業費はいくらになるのか。本紙の試算によると、事業認可済みの路線は平均で1メートル約1200万円。都心部では1メートル4000万~6000万円を超えるケースもあります。全長で約2兆~3兆円をかける計算になります。事業には国から「補助金」が出ます。
日本共産党練馬区議団の島田拓団長は「国は自治体に対し、老朽化した学校などの公共インフラの補修費や整備費は出し渋る一方で、大型道路などの都市開発には多額の税金を注いでいます。国や都の『補助金』が財政的なハードルを下げ、必要性が疑われる公共事業を推進する道具となっています」と語ります。
「道路ファースト」見直しを
日本共産党の、とや英津子都議(練馬区選出)の話 道路を通すために学校を分断するという前代未聞の計画です。教育環境、住民を犠牲にした「道路ファースト」です。こうした計画を許している都の姿勢も問題です。来年度には第五次事業化計画が出されますが、都は実情に合わない道路計画は見直すべきです。これら道路事業は、国、都、区市町村が負担しますが、いずれも税金です。人口も車も減るなか、何十年も前につくられた計画に固執する。行政の転換が求められています。
(「しんぶん赤旗」2025年3月9日付け)