核禁条約締約国会議に参加して

核なき世界へ熱気実感 吉良氏

条約こそが「希望の光」 笠井氏

3月3日から7日まで米ニューヨークの国連本部で開かれた核兵器禁止条約第3回締約国会議は、核兵器の廃絶が「世界の安全保障と人類の生存にとって必須である」とする政治宣言を採択しました。日本共産党を代表して参加した吉良よし子参院議員と笠井亮前衆院議員が会議の成果と活動を語り合いました。

ラフメトゥリン締約国会議議長(左)に要請分を手渡す吉良(中央)、笠井の両氏=2日、ニューヨーク(洞口昇幸撮影)

 吉良 今回、初めて締約国会議に参加しましたが、核兵器使用の危機が高まる国際情勢の中でも、この条約を前に進め、「核兵器のない世界」を実現しようという熱気を感じました。禁止条約そのものが、政府だけではなく、市民社会と国会議員の参加を求めています。実際に世界中から集まって議論していることに感動しました。

 笠井 ロシアの核威嚇、NATO(北大西洋条約機構)の「核抑止力」維持強化などのもとで、政治宣言は、核兵器廃絶への「揺るぎない決意」とともに条約は「この激動の時代における希望の光だ」と逆流を乗り越える本流を示しましたね。いまや批准国73、署名国94に増えて国連加盟国の半数近く、この流れは止められないと実感できました。

吉良 「核廃絶こそ安全保障」 大いに訴えたい

笠井 「日本政府は批准せよ」 うねり起こそう

吉良よし子参院議員

 吉良 第3回締約国会議で一番力強くて希望になったのは、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の濱住治郎事務局長代行と和田征子事務局次長が参加し、発言したことでした。会議冒頭のハイレベル会合で濱住さんのスピーチには、大きな拍手がわき、祝福の言葉が相次ぎましたね。

 笠井 濱住さんは、自らの広島での胎内被爆の体験を語り、「原爆は本人の未来を奪い、家族をも苦しめる悪魔の兵器だ」「生まれる前から被爆者という烙印(らくいん)が押されている」と。核兵器は極めて非人道的な兵器であり人類とは共存できないという強力なメッセージでした。

 吉良 濱住さんは、「私にとって戦争はまだ終わっていない。世界に核兵器が存在し、核弾頭も多数発射できる状況になっている。被爆者にとってはすべての核兵器がなくなることこそが願いなんだ」とおっしゃった。本当に印象的でした。

笠井亮前衆院議員

 笠井 「人道的アプローチ」がいよいよ大事だとあらためて共通の認識になりましたね。

 吉良 ビキニ核実験の被害をうけた高知の漁船の被害救済を求める下本節子さんの訴えも心に残りました。71年前の3月1日、ビキニ環礁での水爆実験によって日本の約1千隻ものまぐろ漁船が被ばくし、その3割は私の出身地・高知県の船でした。ビキニ被災船員、広島・長崎で「黒い雨」を浴びた人々や今回交流したポリネシア、カザフスタンの核実験被害者などへの条約6条、7条にもとづく支援が本当に求められ、非締約国の協力が重要になっています。

 笠井 本当は日本政府こそ、もっと貢献すべきことですよ。韓国原爆被害者後孫会の李太宰(イ・テジェ)会長とも交流しましたね。お父さんが三菱重工長崎造船所に強制労働させられて被爆した。日本の植民地支配への反省と不可分です。私自身も広島の被爆2世として、被爆者への国の償い、核被害者への支援に力を尽くす決意を新たにしました。

核抑止への批判

 吉良 核保有国や日本のような核依存国の条約参加を妨げている最大の壁は「核抑止」論です。今回の大きな焦点でした。私たちは要請文で「いかなる核兵器の使用も、人道上および安全保障上の壊滅的な結果をもたらす」と正面から提起しました。人道性の問題とともに、安全保障の面からも「核抑止」論がなりたたないことを明確にしました。私のスピーチでは、「核抑止が失敗する可能性に議論の余地はなく、何より核兵器を使用し、ヒロシマ・ナガサキの惨禍を繰り返すことは許されない」と力説したんです。

 笠井 続いて私も、「1962年のキューバ危機で、世界は核戦争の瀬戸際に立たされた。幸いにも危機は回避されたが、核兵器の使用を前提とした『核抑止』政策は、全人類の安全を危険にさらす。それは、軍拡競争をつくりだし、仮に抑止が破綻した場合、全世界にとって取り返しのつかない大災厄をもたらす」とのべ、「核抑止」論の呪縛を吹き払おうとよびかけたわけです。

 吉良 会議には、第2回締約国会議の決定にもとづいてオーストリアなどがまとめた「国家の安全保障上の懸念」にかんする報告書が提出され、活発に議論されていました。

 笠井 13カ国、22人が参加した国会議員会議後の記者会見で、吉良さんが紹介していましたが、NATO加盟国で今回オブザーバー不参加のドイツ、ベルギー、ノルウェー、イタリアの議員からも発言がありましたね。

核兵器禁止条約第3回締約国会議を傍聴する吉良よし子参院議員と笠井亮前衆院議員=3日、ニューヨーク(柴田菜央撮影)

 吉良 そうなんです。「『核抑止』は安全保障どころか軍拡をエスカレーションさせるものになっている。だから各国議会で、核抑止に反論して乗り越えよう」という発言が相次いだことは心強かったです。政治宣言は、「核兵器は、核兵器を保有しているか、核抑止に賛同しているか強く反対しているかにかかわらず、すべての国家の安全保障、ひいては国家の存立を脅かすものである」とし、「すべての国家は、核兵器の完全廃絶という喫緊の安全保障上の利益を有している」ということが盛り込まれました。私たちの要請文ともかみ合う内容です。今後、国会でも「核兵器廃絶こそ安全の保障」と大いに議論をしていきたいと思います。

対話の枠組みを

 笠井 ASEAN(東南アジア諸国連合)議長国のマレーシア国連代表部とも懇談しましたが、ASEANがめざす平和の枠組みを核兵器禁止条約に参加していない国や核保有国と対話して働きかける場として重視して、あらゆる場面で働きかけていると強調していたんです。核兵器を使わせず、なくすことと、戦争のない平和なアジアづくりを一体に進める姿勢を感じました。

 吉良 ベルギー労働党のマルク・ボテンガ欧州議員は懇談でも、ヨーロッパで軍拡が進むことへの懸念があるだけに、外交が大事だと力説していました。中満泉国連軍縮上級代表は、「核抑止」が破綻した際の対話のチャンネル、「核抑止」ではない安全保障の枠組みをどうつくるかだと強調されました。日本共産党の東アジア平和提言で示した排除ではなく包摂、対話の枠組みをという訴えは、世界の軍縮をめぐる議論の中でもすごく響きあっていると感じました。

ニューヨークの国連本部前を更新し、核兵器廃絶をアピールする(右から)笠井、吉良、日本被団協の濱住治郎事務局長代行=5日、ニューヨーク(洞口昇幸撮影)

 笠井 来年2026年にはNPT再検討会議が開かれ、核兵器禁止条約の第1回再検討会議が11月30日から12月4日までニューヨーク国連本部で南アフリカを議長に開催されることが今回の会議で決定されました。

 いまだに締約国会議に不参加の日本に「がっかり。日本被団協がノーベル平和賞を受賞した後で、被爆80年なのに日本は機会を失った」という失望の声。もう聞きたくありません。草の根からの世論と運動を盛り上げ、「禁止条約に批准せよ」の大きなうねりを起こしていきたいですね。

 吉良 東京都議選と参院選挙は目前です。やっぱり政治を変えないといけない。アメリカの「核の傘」に依存し、トランプ大統領いいなりで、大軍拡と核抑止力強化に踏み出している石破政権。こんな政治を根本から変えるためにも、今回の会議での議論も踏まえ、日本共産党の躍進がどうしても必要です。私も東京選挙区の候補者として、必ず3選を果たし、核兵器廃絶へ日本政府のイニシアチブを求める決意です。

(「しんぶん赤旗」2025年3月23日付より)

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