巨大噴水は中止を 海水から水道水に突如変更

 都議会は2025年度予算案を審議する予算特別委員会の代表総括質疑を12日行い、日本共産党からは白石たみお都議(品川区選出)が立ちました。同特別委員会は小池百合子知事や理事者と一問一答で質疑します。

白石たみお都議
お金と水二重のむだ遣い

予算根拠は破綻
 「予算編成の時に考えていたものとはまったく別物。予算根拠が破たんしている」
 白石都議は、「むだ遣い」との批判が強い26億円の巨費を投じて都がお台場海浜公園(港区)の水域に建設する世界最大級の噴水計画で、予算案提出後に海水から水道水使用に計画変更した問題を取り上げ、計画を中止するよう求めました。
 問題の噴水は「ODAIBAファウンテン(仮称)」。幅250㍍、噴水の高さは150㍍という世界最大級の規模で小池知事が突然、打ち出しました。整備費は約26億2000万円で、歓迎しているのはお台場地域への進出事業者からなる「一般社団法人東京臨海副都心まちづくり協議会」。フジテレビ、森ビル、日本財団が運営する船の科学館、サントリーなどの大企業が加盟し、オブザーバーに都港湾局も入っています。理事長はフジテレビの日枝久取締役相談役が務めています。
 白石都議は噴水整備を巡って、水域利用者である屋形船事業者から、遊覧コースにある旧防波堤の桜が塩害で枯れてしまうとの心配の声が上がっていると紹介。「そもそも一番多いのは反対の声だ。桜(がモチーフ)の噴水で本物の桜を枯らす計画なんて笑い話にもならない」と述べました。
 都は約2000万円をかけて行った噴水整備の基本設計と実施設計で海水利用を決め、1月の予算案の説明でも海水利用の噴水整備だと説明していました。ところが2月になって突然「周辺環境への配慮」を理由に水道水に変更しました。
 白石都議は「海水を水道水にするのであれば基本設計からやり直すのは当然だ」と強調。「水道水の利用となれば、噴水設備までの水を通す配管が必要で経費は増える要素しかない。想定されなかった水道代もかかる」と述べ、予算の出し直しを求めました。
 松川桂子港湾局長は「影響は事業全体から見れば限定的なもの。(予算計上した)26億2千万円の範囲内で整備を行う予定で、予算の変更も出し直す必要もない」と強弁しました。
 白石都議は「小池都政のもとで(水道料滞納者への)水道の給水停止が激増しているのに、巨大噴水ではこれでもかと水道水を吹き上げる。水を出す場所が間違っている。しかも水は海の中に垂れ流す。水のむだ遣いだ」と批判しました。
 白石都議はまた、IR(カジノを含む統合型リゾート)で、まちづくり協議会メンバーのフジテレビや日本財団がお台場への誘致を繰り返し働きかけてきた事実を明らかにするとともに、小池知事もIR・カジノの調査委託費を12年間、毎年1000万円計上し続けていると指摘。「世界ではカジノと言えば巨大噴水がある。人の不幸の上に成り立つカジノ誘致はきっぱりあきらめるべきだ」と主張しました。

天下り〝闇リスト〞示す
「都と自民の癒着断ち切れ」

 白石都議は東京都が退職した元幹部職員の天下りをあっせん、差配する裏リストの存在を初めて明らかにしました、リストには都議会自民党の政務調査会事務局も含まれており、都と都議会自民党との癒着問題が改めて浮き彫りになりました。
 問題のリストは「外郭団体等OB役員名簿」。白石都議によると、専用の個室や秘書、送迎車の有無、年収などの待遇まで記載しています。
 都は幹部職員の天下りに対する都民の批判を受け、2015年に都職員退職管理条例を制定し、退職した幹部職員の再就職状況一覧を毎年作成し、ホームページなどで公表しています。しかし都はこれとは別に、問題の名簿を作成していました。
 佐藤智秀総務局長は「元幹部職員の状況を把握する基礎資料」だとして、名簿の存在を認めました。白石都議はOB名簿に詳細な待遇を記載し管理しているのは「都が天下りをあっせん、差配する裏リストだからではないか」と追及。
 さらに共産党都議団の調べでは再就職先に、民間企業とともに都議会自民党政調会が入っていると指摘。「都が都議会自民党の人事に関わっている驚くべき疑惑だ。中立・公正な行政がやることではない」と厳しく追及しました。
 佐藤総務局長は「個別の記載内容については、団体や個人に関する情報なので答えられない」と答弁を拒否。再就職の斡旋疑惑については「個人による再就職であると認識している」と強弁しました。
 小池百合子知事は名簿の存在について「承知していない」とした上で、「条例に基づく退職管理の厳格な運用と、再就職情報の公表範囲の拡大という透明化を進めてきた」と答えました。
 白石都議は「都が特定の会派に便宜を与え、政調会職員に元幹部職員を天下りさせている疑惑で、到底許されない」と強調。「都議会自民党」は裏金事件を起こした政治団体で、その事務担当者が元都幹部職員だと指摘。その上で「都と都議会自民党の闇を明らかにし、癒着を断ち切ることが必要だ」と述べ、名簿を同委員会に資料提出するよう求めました。川松真一朗委員長(自民党)は「理事のみなさんと協議する」としました。

住宅の高騰招く再開発誘導
 白石都議は都が推進する巨大再開発が都内の住宅価格と家賃高騰を招いている中、都の住宅対策は不十分だとして、再開発の規制とともに▽3年間100万世帯に月1万円の緊急家賃補助▽所得に応じた家賃で住み続けられる「都型社会住宅」を10年間で5万戸供給▽都営住宅を10年間で10万戸供給―を提案しました。
 白石都議は、都内マンションの平均価格と平均年収との対比を質問。谷崎馨一技監は都の都市整備局作成の資料を基に区部1億1483万円、年収の13・3倍、多摩地域5427万円、同6・3 倍、都全体では1億510万円で12・3倍だと答弁。
 白石都議は「1990年前後は国も都も住宅費は年収の5倍以内を目安としていたが、今は12倍。異常な住宅費に都民は苦しめられている」と強調。小池知事が公約し、予算案に盛り込んだ都民に低廉な家賃で提供するとした「アフォーダブル住宅」の供給戸数や低価格とする方法について質問しました。しかし、都からは具体的な答弁はありませんでした。白石都議は「要するに、家賃は市場任せ、事業者の提案任せだ」と批判しました。
 白石都議は都と国による補助金と税制優遇、容積率の緩和、場所によっては都有地まで提供し、再開発を誘導し、超高層・高級マンションが建てられてきたと告発。かつて都の住宅基本計画「マスタープラン」は、超高層マンションの「規制」に言及していたのに、現在は削除されていると指摘しました。
 その上で「小池都政が住宅政策を変質させ、民間開発を積極的に誘導してきたことが、住宅費用や家賃の高騰を招き、都民を苦しめている」と批判しました。
 白石都議の地元、品川区の665戸の都営住宅がある地域で進む「品川浦周辺地区再開発計画」に言及。「既に準備組合が立ち上がり、都営住宅を消した図まで作成されている」として、都が事業者に抗議すべきだと迫りました。
 住民に説明はしたのかとの質問に小笠原雄一・住宅政策本部長は、「説明を行う段階ではない」と答弁。白石都議は「だまし討ち」だと厳しく批判し、住む権利の保障を求めました。

夜間定時制残せ
 白石都議は学びのセーフティーネットである都立高校の夜間定時制の廃止問題について取り上げ、「『誰一人取り残さない』というなら、夜間定時制こそ大切にしていただきたい」と述べ、小池知事に7校の募集停止撤回を強く求めました。

曽根はじめ都議
ヤングケアラー支援求める

 都議会予算特別委員会は総括質疑を13、14の両日行い、共産党から曽根はじめ(北区選出)、福手ゆう子(文京区選出)、斉藤まりこ(足立区選出)の各都議が立ちました。
 曽根都議はヤングケアラーの実態調査や支援体制の拡充を求めました。ヤングケアラーとは、本来は大人が担う家事や家族の世話を日常的に行っている子どもや若者のこと。国の調査では中学2年生で家族の中に世話をしている人がいる割合は6%、平日1日当たりに世話に費やす時間は平均4時間など、深刻な実態の一端が明らかになっています。
 曽根都議は「ケアの役割を過度に負うことで健康を損なう、学校に行けない、休み、遊ぶ時間がないなど、子どもの権利が守られていない恐れがあるのに、家庭内の問題とされ支援の対象として認識されにくい」実態があると指摘。その上で「子どもの権利に関わる問題として支援をしていく必要がある」と強調。小池知事は「適切な支援につなぐことが必要」との認識を示しました。
 曽根都議は的確な支援のための実態調査が必要だとし、広域に及び市区町村の把握が困難な高校生の調査は、区市町村まかせにせず都自身が実施すべきだと主張。不十分な高校生のヤングケアラー支援のために、全都立高校の3分の1にとどまるスクールソーシャルワーカー配置の早急な充実を求めました。
 さらに「ヤングケアラー本人とケアを受けている人を含めた家族全体を支援する視点が必要で、多くの機関の連携が不可欠だ」と指摘。その支援の核となり重要な役割を担うのがヤングケアラー・コーディネーターだとして、現在の16自治体から都内全自治体への配置を早急に目指すよう求めました。
 山口真福祉局長は「来年度は31自治体分のコーディネーター配置経費を予算案に計上している」と明らかにしました。
 曽根都議はまた、「家族の介護などで自由な時間や体験を持てなかったことによる『体験格差』を取り戻す取り組みへの支援も重要だ」と強調し、都の考えをただしました。
 山口福祉局長は「来年度はヤングケアラーを含む全ての家庭の子どもに多様な体験機会を提供できるよう、自然と親しむ野外活動やスポーツ観戦などの事業を実施する区市町村を支援する」と答弁しました。

訪問介護事業所への支援を
 国が昨年4月から訪問介護の基本報酬を引き下げたことで、経営が立ちゆかなくなる訪問介護事業所が相次ぐなど、深刻な影響が広がっています。
 曽根都議は地元北区での実態を示し、都として事務所家賃への補助や事務員への人件費支援、要支援認定者への訪問支援に対する補助など事業所の経営を抜本的に支える支援を提起しました。

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