賃上げ好調、どこの話? 非正規や中小の春闘でスト

 テレビや大手新聞が「今年の春闘は満額回答以上もある。連合(日本労働組合総連合)はベア(基本給を底上げするベースアップ)と定期昇給を合わせた大手の正社員の賃上げ率が、初回集計で平均5・46%と発表」、「中小は今後、本格化」あるいは「中小は福利厚生で援助」と報じて、明るい兆しを演出しています。しかし、労働人口の7割を占める中小企業や、大手でも非正規で働く人たちの春闘では「どこの国の話だ」と憤りの声が上がります。

 「時給1163円(東京都の最低賃金)で、月に10万円程にしかならない賃金で生活が出来ますか。従業員である私たちをコストと呼び、命に直結するささやかな要求に背を向け続ける経営陣に向けて、人間の尊厳と生活を守るために人生初のストライキに打って出た」という声が丸の内に響き、外国人観光客が足を止めて動画を撮影する姿もありました。今年で3回目になった非正規春闘(ことば)・統一ストライキ行動が10日、10社以上で行われました。同春闘では一律10%の賃上げを掲げています。
 書籍の大手取次の物流センターで働く非正規雇用の労働者で構成する「出版労連・出版情報関連ユニオン取次支部」は、親会社のアウトソーシング社前で声をあげました。同支部は▽出版不況により仕事がないからと早帰り(シフトカット)を強要され、その分の時給がカット▽有給休暇の賃金は6割しか支給されない▽10年以上賃上げがない―など、異常な実態を告発。さらに「団体交渉で会社は『黒字で賃上げはできるけれど、コストの関係から、するつもりはない』と述べ、労働者をモノ扱いしている」として時給150円アップと一時金などを求めてたたかっています。
 参加者も「立派なビルに入居する本社と産業は、最賃ギリギリで働く人が支えている」「従業員の最低限度の生活さえ守れない経営者は淘汰されるべき」などと口々に語り、企業の社会的責任を果たすように求めました。
 同日、非正規春闘実行委員会が記者会見を開きました。今回、初めて参加する公務非正規の組合では10自治体に賃上げ要求を出しているなどと公表。首都圏青年ユニオンに加盟する大手回転寿司スシローで働く非正規雇用の労働者は「1月10日に申し入れてから2回、団体交渉をしたがゼロ回答だ」として、地方と東京でストライキを決行すると述べました。

正規でも低調が
 三多摩地域では13 日、三多摩春闘実行委員会がバスを走らせ、リレーストライキ激励行動を展開しました。
 ベアの回答が要求とかい離しているとして、京王電鉄(本社:多摩市)前でストライキに立ち上がった京王新労働組合の集会では、東京地評(東京地方労働組合評議会)の井澤智事務局長がマイクを握りました。「新卒の初任給が上がっているというが、一方で経験を積んできた中高年の賃金が上がらない。失われた30年で、労働者が失った賃金は180兆円とも言われている。10%アップはささやかな要求だ。産業別の垣根を超えたたたかいだ」と激励しました。
 「このままでは離職者に歯止めがかからない。安心して医療が提供できるように」と、看護職員の処遇改善などの署名を集めながら訴えていたのは民医労健生支部(立川市)。ベアがゼロ回答との危機感も述べていました。
 医療費は国が定める公定価格であるため、物価高騰により増した経費を収入に転嫁することが出来ません。コロナ関連の補助金廃止などのため、医療機関はどこも経営が悪化しています。「医療が守られるように。ケア労働者が働き続けられるように」と立ち上がっていました。
 賃下げを伴う新人事制度に強行移行し、不誠実団体交渉などで東京都労働委員会に救済が申し立てられている、医用検査機器などを製作し、「リオネット補聴器」で有名なリオン㈱(本社:国分寺市)の子会社のリオンサービスセンターでもストライキが行われました。
 同社では組合の7項目の要求に、3月5日の団体交渉でゼロ回答でした。再検討となっていたにもかかわらず、翌日に社内メールで「ベースアップは行わない」と一方的に通知。参加者は「組合の話は聞かない、聞こえないという姿勢は不誠実極まりない」と話していました。

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