防衛省は3月31日、米軍が、自衛隊の統合作戦司令部との連携を専門に扱う部署を新設し、港区六本木の赤坂プレスセンターに拠点を置くと発表しました。国は「在日米軍の統合軍司令部へのアップグレードの開始」と位置づけており、米軍の指揮下のもと、自衛隊が米軍と肩を並べて軍事作戦を進めようという動きが、都心の港区を拠点に進められようとしています。

日本組み込み「力の平和」
自衛隊の統合作戦司令部は3月24日に設置されたもの。新宿区市ヶ谷の防衛省内に置かれ、陸海空の三つの自衛隊を、一体で指揮します。
今後、設置予定の在日米軍の統合軍司令部は、現在の司令部を格上げして横田基地に置かれるとみられます。在日米軍の指揮は、これまでハワイにあるインド太平洋軍司令部が担っており、在日米軍司令部は基地の管理などが主な役割でした。これが、実際に戦争を指揮する司令部になることになります。
赤坂プレスセンターは、市ヶ谷からほど近く、ヘリポートがあって横田基地への移動もしやすいことから、日常的に自衛隊の統合作戦司令部との連絡・調整を行うための機関となります。
赤坂プレスセンターは、旧日本軍の麻布第三連隊があった場所を、戦後直後に米軍が接収した土地。現在は米軍の準機関紙・「星条旗新聞」や、ヘリポート、軍関係者の宿泊施設などがあります。
ヘリポートに飛来するヘリコプターの騒音は周辺住民や、近隣で働く人たちを苦しめ、返還運動が長年、取り組まれてきました。地元の港区も、毎年のように、返還を求める要望を国に行っています。
港区長も緊急要請
防衛省の発表資料は、今回の新部署の設置によって「司令部の人員が大幅に増加する見込みはない」「施設の新設や大規模改修の予定はない」など、基地負担の強化にはつながらないという認識を強調しています。
ただ、横田基地の米軍司令部と市ヶ谷の自衛隊司令部が緊密に連携をするとなれば、同ヘリポートでのヘリの離着陸が増えるなど、さらに負担が増すことになります。さらに、地元自治体や住民が撤去を求めているにもかかわらず、基地の恒久化にもつながります。
港区長と区議会議長は3日、防衛相あての緊急要請を行い、同基地の恒久化につながる懸念を伝えて改めて撤去を求めるとともに、「『アップグレード』の内容の詳細な情報提供」を要請しました。
殺傷力を向上させ
今回の拠点設置の発表に先立ち、3月29日にはヘグセス米国防長官が来日し、在日米軍の司令部の格上げなどについて、中谷元防衛相と会談し、共同記者会見を開いています。
日本平和委員会の千坂純事務局長は、この会見でヘグセス氏が語った内容が、「今回の『アップグレード』を通じて、日米が何を目指すのか、きわめて露骨に語っている。アメリカ主導のもとで日本がどこに向かわされようとしているのか、今回の拠点設置を通じて、広く都民、国民が考えるきっかけになってほしい」と指摘します。
ヘグセス氏は、「在日米軍を戦闘司令部として再編する」として、人員を増やし、司令官に新しい任務と権限を与えると明言。「アメリカが先導する力による平和」を実現するとして、自衛隊と米軍が「戦闘能力、殺傷力、即応性を向上させながら、緊密に協力していくことを楽しみにしている」と述べています。
さらに、「日本は西太平洋でいかなる不測の事態に直面しても、最前線に立ち、互いに支え合いながらともに戦う」とも述べており、自衛隊は、装備や、作戦立案などで圧倒的に上位の力を持つ米軍の指揮下に事実上、入って、世界各地で実際の軍事作戦に組み込まれることになります。