都議会自民党の政治資金パーティーを巡る裏金問題を受けて設置された都議会の政治倫理条例検討委員会は9日、裏金づくりが行われた2019年と22年のパーティー開催当時の幹事長2人の参考人招致案を自民、公明、都民ファーストの賛成多数で決めました。日本共産党、立憲民主党、ミライ会議は、全容解明につながらないとして反対しました。招致をするのは鈴木章浩、小宮安里両都議で、公明党が提案。16日に小宮氏、23日に鈴木氏が出席します。

自民、公明、都ファが反対
参考人招致では公明案の他、日本共産党、立憲民主党、ミライ会議の3会派が、関与した現職都議19人全員を含む22人を招致するよう共同で提案しましたが、自民、都ファ、公明が反対し否決。都ファは元幹事長と会計責任者の計4人の都議を提案しました。
採決(公明の委員長を除く13人)では複数案に賛成が可能で、過半数を得た案を採用。自民3人、公明2人、都ファ3人が賛成した公明案だけが過半数になりました。
共産党の白石たみお都議は「(パーティー券収入から)『中抜き』した当事者を呼ばなければ事実は分からない。自民党は裏金をいくら集め、どこに保管し、使いみちが何なのか共産党都議団の公開質問状に何も回答していない。鈴木、小宮両氏の招致だけで済まそうとするのは、お茶を濁すものだ。刑事告発されている都議も呼ばないのでは、うやむやになる」と強調。
大山とも子都議は「事実解明がなければ実のある政治倫理条例はできない。2人の招致で終わりにしてはならない」と述べました。
立民も「このままでは全容解明を放棄することになる。必要なら(全当事者への)文書での質問も含めて行うべきだ」、ミライも「2人の招致だけでは全容解明にならない」と指摘しました。
自民党の川松真一朗都議は公明党案に賛成した理由について「自民党のパーティーのチケット販売、その後の集金のあり方が問われていて、全員を呼ぶ前に指示した2人が話すことが重要」と説明。一方、共産党など3会派の招致案について、「しんぶん赤旗」日曜版や共産党都議団が指摘した裏金議員のリストには疑惑の段階にある人まで含まれているから「怪文書の類いのようなもの」だと決めつけ、「賛同できない」と居直りました。
郷原弁護士から参考人聴取
採決に先立ち、元東京地検検事の郷原信郎弁護士が参考人として出席し、「裏金をもらった議員が処罰されないのは政治資金規正法にあいた大穴。都議会でも突き詰めなければならないことは、お金が本当はどこに入り、(政治資金なのか個人なのか)どこに帰属したのかを明らかにすることだ」と指摘。都議会に裏金問題の実態解明と再発防止を求めました。
白石都議は再発防止にとって「政治資金収支報告書の訂正で済まされる問題ではないと思うが」と述べ、見解を求めました。郷原氏は同意した上で、「個人の政治活動に関する寄付かストレートに個人に帰属する所得か、そのどちらかである可能性が相当あるのではないか。そこを解明するのが最も重要なことだ」と強調しました。
都議会自民党の裏金問題とは
都議会自民党が2019年と22年に開催した政治資金パーティーで、都議1人にパーティー券100枚200万円分が配られ、半分の50枚100万円分の販売ノルマ超過分の収入は政治資金収支報告書に記載せず、都議自身が得ていました。
東京地検特捜部は1月17日、パーティー券などの収入計約3500万円を収支報告書に記載しなかったとして、都議会自民党の会計担当職員を略式起訴した一方、都議らは立件しませんでした。
裏金問題は「しんぶん赤旗」日曜版(23年11月26日号)が報じたことがきっかけで発覚。宇田川聡史氏は都議会議長を辞任。自民党は6月に行われる都議選に立候補を予定していた幹事長経験者6人の公認を見送る方針を明らかにしています。
「しんぶん赤旗」日曜版は3月2日号で、独自に入手した資料「令和元年12・23『飛躍のつどい』チケット(追加分)」を元に、19年のパーティーで自民党が不記載の事実を認めた都議ら21人の他にも現職都議を含む12人いたことを示す「リスト」の存在を報じています。
共産党など3会派が招致を求めた自民党の現職都議は別表の通り。
筋違いの攻撃孤立する自民
都議会自民党の裏金問題に端を発して検討委員会が設置されたのに、自民党は何ら説明責任を果たさず、逆にこの問題を追及してきた共産党に対し、不当な言いがかりをつけました。
「都議会議員という優越的な地位を活用し『しんぶん赤旗』購読を(都職員に)強要している。パワーハラスメントそのものだ」(松田康将都議、3月12日の予算特別委員会)というもの。
しかし、政党機関誌の購読を勧めることは憲法が保障する政治活動であり、購読者にとっては個人の思想・信条、内心の自由の問題です。
平田充孝都議は3月31日の検討委員会の席上、「社会通念上相当な範囲の強要」があったとして、共産と立民の都議4氏の参考人招致を要求しました。
これに対し各会派からは「裏金当事者を(招致)リストに載せず、他会派を攻撃するのは筋違い」(立民、関口健太郎都議)、「(自民が)反省せず他会派に攻撃を向ける人選は残念」(ミライ、森愛都議)、「委員会は自民党の不記載問題から設置された。他の案件は差し控えるべきだ」(都ファ、小山有彦都議)との意見が出され、どの会派からも賛同は得られませんでした。
平田氏は共産、立民都議を招致するための「資料」を示すとしましたが、示すことなく取り下げました。
白石都議が語ったように「検討委員会にあれこれの問題を持ち込んで裏金問題の解明を棚上げ」するのを狙ったものの、筋違いの攻撃にますます孤立を深め、追い詰められる結果となりました。