日本共産党国会議員団と同東京都議団が24日に発表した政策「住宅費負担を軽減して、住み続けられる東京に」は次のとおりです。
住宅費負担を軽減して、住み続けられる東京に
2025年4月24日 日本共産党国会議員団 日本共産党東京都議会議員団
住宅価格高騰・家賃値上げ―ふつうに働く勤労者が住めない東京にしてはなりません
東京の住宅価格が高騰し、それが家賃値上げに波及して、ふつうに働く勤労者が東京に家が持てない、東京に住めないという深刻な事態が広がっています。
「正社員の共働きでも都内の新築マンションは買えない」、「保育所の送り迎えもあるから職住接近の中古マンションを買う予定だったが手が出なくなった」、「子どもが大きくなり広いところへ移りたいが家賃が高すぎる」など切実な声が、私たちが都民のみなさんの暮らしや政治に対する意見・要望をお聞きするために取り組んでいる「要求対話・アンケート」で寄せられています。
東京都23区の新築マンションの発売平均価格は1億1181万円(2024年)と10年間で1・7倍、多摩地域でも1・3倍に値上がりし、中古マンションの平均価格も、東京23区で1・7倍、多摩地域でも1・5倍になっています。
東京での新築マンション(70平方メートルの場合)の年収倍率は約18倍、築10年マンションでも年収倍率約15倍(東京カンテイ試算)とされ、「年収の10倍」と言われた80年代末のバブル期をはるかに超えています。
賃貸の家賃も、東京都23区のマンションでは、10年間で1・4倍、多摩地域でも1・3倍に上昇したとされています(同前)。
財界のための規制緩和と大型再開発―住宅価格高騰は政治の責任です
国や都は、住宅価格高騰の原因を人件費や資材の値上がりと言いますが、それだけでは、バブル期をはるかに上回るような住宅価格高騰の異常事態を説明できません。この間、東京のあちこちで大手デベロッパーによる大規模再開発がすすみ、「億ション」とタワーマンションが続々とつくられ、住宅価格がどんどん上がっていきました。
住宅価格の異常高騰は、大規模再開発とそれを規制緩和や減税、都有地の提供などで、推進した東京都と国の政治に大きな責任があります。投機目的での住宅取得や転売を野放しにしたために、海外を含む投機マネーを呼び込み、住宅を投機の対象にしてしまったことも、住宅価格高騰に拍車をかけました。
大規模再開発による住宅価格の高騰は、東京だけでなく、全国の大都市とその近郊でも起きています。大規模再開発優先で、大手デベロッパーに最大限の便宜をはかる政治を転換し、誰もが安心して住み続けられる住宅への政治の責任を果たすべきです。
“住まいは人権”―住宅費負担の軽減、住み続けられる東京に
日本共産党の提案
「衣食住」というように、住まいは生活の基本であり、憲法25条が保障する生存権の土台です。安心して暮らせる住まいの提供は、食料の安定供給と同様に、政治が国民に果たすべき責任です。日本共産党は「住まいは人権」の立場から、自公政権と小池都政による大型都市再開発、規制緩和路線のゆがみをただし、住み続けられる東京にするために以下の政策を提案し、その実現に力をつくします。
1.住宅費を軽減する家賃補助と家賃減税制度をつくります
日本には、家賃負担へのまともな支援制度がありません。イギリス、ドイツ、フランスなど欧州諸国は、住宅支援制度は、住宅ローン減税と家賃補助の2本立てになっています。物価高で暮らしがたいへんな時だからこそ、家賃補助に踏み出す時です。とりわけ家賃値上げが激しい東京は緊急の対策が必要です。
◎緊急に東京都で、民間借家の約4割―100万世帯に、月1万円の家賃補助を行います
当面3年間、月1万円の家賃補助を、東京の民間借家270万世帯の約4割に相当する100万世帯規模で行い、子育て世帯、若者、学生、高齢者、シングル女性をはじめ、家賃値上がりで苦しんでいる幅広い世帯を支援します。
◎家賃減税制度を住宅ローン減税に匹敵する規模でつくります
住宅ローンへの減税は、年間8000億円規模になっていますが、賃貸住宅に暮らす人には支援がありません。
・家賃が所得の2割を超える人を減税の対象にします。
・2割を超える部分に最大15%減税します。例えば、13万~15万円の家賃を払っている平均的勤労者世帯(年収500万~600万円程度)だと年12万円の減税です。
・高額所得者、高額家賃には減税しません。
◎国の制度として、低所得者や家賃負担が重い世帯、学生への家賃補助制度をつくります
所得税非課税や所得税額が小さい世帯への支援は、家賃減税では十分でありません。また、学生もアパート代の値上がりに苦しめられています。
―現行の家賃低廉化制度(セーフティーネット住宅)を改め、家賃補助制度として抜本的拡充します。
現在も、国が家賃を補助する制度はありますが、全国でわずか600戸程度にすぎません。若者、高齢者、障害者をはじめ低所得者への家賃補助制度として抜本的に改め、「月1万円、200万世帯」の規模からはじめ、順次拡大していきます。
―UR(都市再生機構)住宅に家賃減免制度を都市再生機構法(25条4)に基づいて創設し、低所得者、高齢者の住まいの安定をはかります。
現在は、新たな入居者とUR都合による転居者にしか適用のない「家賃の減免」制度を、すでに入居している低所得の借主に拡大します。
2.都も国も公的住宅の建設を再開します
かつては国も東京都も、住宅都市公団や東京都住宅供給公社などで公共住宅を建設してきました。いまこそ「民業圧迫」などといって撤退した勤労者向けの公共住宅の新規建設や都営住宅の新規建設を再開すべきです。公共住宅の建設・供給は、投機で過熱している住宅市場を鎮静化させる効果もあります。
小池都知事や都政与党の自民、公明、都民ファーストは、「アフォーダブル住宅」などと言いだしましたが、東京都は「ファンド」に100億円拠出するだけで「民間まかせ」です。規模も都議会で質問されても答弁できず、「400戸程度」などと報道されるように、ごくわずかです。「アフォーダブル住宅」=「手ごろな」「安価な」住宅は、東京都が直接乗り出して公的住宅を供給することこそ求められています。
◎東京都住宅供給公社による公的住宅の供給を再開し、勤労者、ファミリー、シングルなど多様な人たちが住み続けられる公共住宅(東京社会住宅)を10年間で5万戸供給します
東京都住宅供給公社は、新規建設を停止する一方で、「近傍同種家賃」を導入し、大きく利益をためこんでいます。新規建設を再開し、中間層向けの住宅を所得に応じた家賃で供給します。
◎都営住宅の新規建設の再開、「借り上げ都営住宅」などにより10年間で10万戸増やします
2025年度も都営住宅の新規建設はなく、新規建設ゼロは26年目です。しかし、全国の公営住宅の応募倍率が平均約3・6倍なのに対し、都営住宅は約15倍です(国土交通省調査 2022年度)。新規建設の再開・建て替え時の増設・借り上げ都営住宅の活用の「3点セット」で、10年間で10万戸を供給するとともに、収入や年齢などの基準を見直し、入居対象者を拡大します。
◎UR住宅を国が関与する公的住宅として位置づけ、勤労者、ファミリー、シングルなど多様な人たちへの住宅を供給します
UR都市機構は、管理する賃貸住宅の戸数を、現在の約70万戸から2033年に約65万戸まで削減としています。この削減目標を撤回させ、住まい確保策を担う公的住宅として、拡充します。
◎住宅リフォーム助成制度を拡充し、「空き家」の活用などをすすめます
管理不全の「空き家」を、リフォームにより安心・安全の住まいに改築するため、住宅リフォーム助成制度を拡充します。地域の工務店に可能な限り空き家リフォームの仕事を回し、地域経済の活性化もすすめます。
3.価格高騰を招いた規制緩和を抜本的に見直し、住宅投機を規制します
◎「東京特区」などの指定を解除し、都市計画の法的手続きを厳守し、安易な容積率緩和をやめます
住宅価格高騰をもたらした、特定都市再生緊急整備地域の指定、国家戦略特区による「特区」の指定を解除するとともに、東京都の都市開発制度を見直し、規制緩和と大規模再開発による住宅価格高騰の原因を取り除きます。緩和条件の明確化・透明化をすすめるなど、容積率の緩和などを安易に行うことをやめます。タワーマンションの新規建設の規制を自治体がまちづくりや都市計画、住宅価格の安定などの観点から行えるようにします。
◎投機目的の住宅転売など不動産投機を規制します
居住目的でない住宅投資、転売目的の取引をなくすために、販売時の契約に購入者の居住や一定期間の転売禁止を盛り込むなど、居住目的でない住宅投資を防止することを販売業者に督励し、転売抑止に不熱心な企業名を公表するなどの措置をとります。
ドイツで行われているように、不動産投資信託の対象から住宅を除外し、投機マネーの住宅市場への流入を防ぎます。
居住実態のない「2年以内の転売」に上乗せ課税するなど、土地等売却益への上乗せ課税制度を復活・強化します。
どうして住宅価格は高騰したのか―財界のための大型再開発をすすめ、住宅を投機対象にした自公政権と小池都政の大失政
小池都政が、大手デベロッパーと一体になって大型都市再開発事業を推進したことが価格高騰の第一の原因です
小池都政は、「国際金融都市・東京」などをかかげ、高級住宅(億ション)を取り込んだ大型再開発、高層ビル建設を推進し、都の住宅基本計画「住宅マスタープラン」から、「超高層マンションなどの新規開発」の「規制や誘導のあり方を検討」するという記述も削除してしまいました。
国の「規制緩和」策を最大限利用して容積率の大幅緩和をすすめ、晴海フラッグ(オリンピック選手村跡地に三井不動産などが開発した高級マンション群)や築地市場移転跡地などの再開発では、都有地まで提供し、都市計画公園として規制していた神宮外苑まで再開発の対象にしました。その結果が、住宅価格の高騰と「億ション」の乱立です。
「東京特区」など、自公政権による野放図な規制緩和と大手デベロッパーへの減税や金融支援が小池都政の大型都市再開発を後押ししました
2011年には国際競争力強化を名目に都市再生特別措置法が改正され、東京では都心部を中心に7地域、約3000ヘクタールが「特定都市再生緊急整備地域」に指定され、容積率の大幅緩和が可能になりました。大手デベロッパーは容積率緩和で得た床面積を売却して巨額の利益を得ることができます。
指定された再開発事業にかかわる大手デベロッパーには、所得税・法人税、不動産取得税、固定資産税・都市計画税、登録免許税が減税され、その額は2024年度で110億円、10年間で820億円にのぼります。
さらに、大型再開発を一気に加速させ、住宅価格高騰に拍車をかけたのが、安倍政権による「国家戦略特区」、「東京特区」です。容積率がさらに緩和されるとともに、都市計画の「ワンストップ特例」が適用され、内閣府と都が主体となる国家戦略特別区域会議の「東京都都市再生分科会」が各地の都市計画を一括して決定する仕組みにされました。「都市再生分科会」は、この10年余で、実際に会議が開かれたのは3回だけで、25回は「持ち回り連絡」という状態です。「ワンストップ」どころか、都市計画の法的手続きをスルーして大手デベロッパーの大規模再開発を推進したのです。
国内外の不動産ファンドによる住宅投機を野放しにし、住宅が投機対象になってしまいました
東京の住宅価格高騰のもう一つの大きな要因が、投機目的の住宅取得、転売を野放しにして、住宅を投機の対象にしてしまったことです。
「転売目的の不動産投資が拡大し、築1年以内のマンションの転売が10年前の3倍に」(日本経済新聞)、「晴海フラッグ」は、「転売目的での投資家や不動産会社のマネーゲームの場と化し、物件引き渡し前にもかかわらず、購入時よりも3000万円以上も高い9500万円で転売されたケースもある」(NHK「クローズアップ現代」)などとメディアでも報道されています。
国内外の不動産ファンドの運用資産額は、アベノミクス以降に急拡大し、10兆円を超える投機資金が住宅市場に流れ込みました。アベノミクスの異次元の金融緩和による円安誘導と超低金利政策によって、海外投資家にとって日本のマンションは割安になっていることも海外の投機マネーを住宅市場に呼び込んだ背景にあります。
住宅価格高騰の根底にある、財界・大企業優先の政治のゆがみをただします
大型都市再開発で大もうけをしたのは大手デベロッパーです。大手デベロッパー5社(三井不動産、住友不動産、三菱地所、東急不動産、野村不動産)は2024年3月期決算で過去最高益を更新しています。一方で、自民党に、大手デベロッパーやハウスメーカーなどが加盟する不動産協会から毎年4000万円、三井不動産は1社で毎年2000万円の企業・団体献金をしています。
国と東京都が規制緩和や税金を使った公的支援で大型都市再開発と高級マンション建設をすすめました。その結果、住宅事情が改善したならまだしも、まったく逆に、国と東京都の政策によって、価格の高騰、家賃値上げが起きたのです。こんな大失政があるでしょうか。
日本共産党は、住宅費負担の軽減、公的住宅の供給など、住宅費の負担軽減、公共住宅の供給などのためにがんばります。同時に、住宅価格の高騰を招いた財界・大企業の利益優先の政治のゆがみをただす改革をすすめ、住まいは人権の立場で安心して住み続けられる住宅を提供する政治に変えていくために力を尽くします。
(「しんぶん赤旗」2025年4月26日付より)